2018年4月5日 更新

桜美林大学と産学連携!「ディスプレイ研修合宿」レポート第一回

桜美林大学造形デザイン科の学生7名に、店頭販促の講義とワークショップを通じて、セールスプロモーション業界への理解を深めてもらう取り組みとして、産学連携の「ディスプレイ研修合宿」を行いました。レポート第一回では、店頭分析からオリエンテーションまでをまとめています。

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2018年3月1日~3日の3日間、
株式会社ボンビでは、このボンビゴシップにも執筆を頂いている、向坂氏が講師をされている桜美林大学造形デザイン科7名を大阪本社に迎え、ディスプレイ研修を行いました。

目的は、産学連携での新たな視点や発想の模索と、SPツールの企画製造の普及と人材育成をはかるためです。
学生さん達にとっては、造形デザインに対してプロの視点での講座を聞いたり、ワークショップを行うことで、知識を得たり仕事感覚を養ったりすることができる研修ということで、定員5名のところ7名の方にご参加頂けました。

その内容を数回に分けてレポートしていきたいと思います。

第一回 事前研修 店頭の因数分解

今回は研修のその日に課題を出してワークショップをするのではなく、
事前に課題を発表して、店頭に行き、店頭を見て、店頭分析をしてからワークショップに臨むという形式をとりました。
学生さんには、やや難しい内容にはなったと思いますが、SP(セールスプロモーション)会社への理解を深めてもらうために、しっかりと構造的にアプローチしていくワークショップを目指しました。

店頭分析

店頭分析には立地マーケティングやVMDにまつわる様々な要素が含まれますが、ここでは、小売り(店舗)側ではなく、商品が発信するコミュニケーションという分析をしていきます。
以前もこのボンビゴシップで記事化をしていますが、店頭販促の目的は、ターゲットにその商品を『自分ゴト化』してもらい、購買動機付けるということです。
店頭情報接触という限りなく短い時間の中で理解・記憶しやすいセールスシナリオを描くことが、
店頭でターゲットに今買うべき理由を伝えることになります。

では、どのように噛み砕いていけばいいのでしょうか。

我々がよくやる手法としまして、以下の3つを考察していきます。
①売り手の視点設計
②買い手の視点設計
③売り手と買い手の双方向の視点設計
(このうちの③に関しましては、今回のディスプレイ研修の時間内で一気にはやれませんでしたのでまた後日別の機会で記事化をしたいと思います。)
①売り手の視点設計

これは、どのように噛み砕けばいいのでしょうか。
よくやる手法としましては、ライオンさんのパッケージデザインの考え方を引用します。

パッケージデザインは
●情報性価値
●機能性価値
●識別性価値
●情緒性価値
をしっかり伝えられているかが重要と言われています。

パッケージはフェイス以外は、お客様が商品を手に取られないと視認されません。

それゆえに、手に取ってもらう前段階が店頭販促物の勝負どころです。
商品から発信したい情報として、4つの価値に関して、プライオリティをつけて、言葉やイラストや画像でしっかり伝えることができているかが店頭販促物のミッションとなります。

店頭を分析する場合の第一歩として、売り手視点で、その売場(店頭販促物)から4つの価値を抽出していくことが重要です。
②買い手の視点設計

次にターゲット側からその売場を噛み砕いていきます。
これには、電通さんが昔から謳われている購買プロセスモデルのARCASを使います。
A:attention R:remind C:compare A:action S:satisfaction

このうち後半のA、SのAは購入の後押し(べた付けや値引きやセット売り)部分で、Sは購入後のことなので、純粋な店頭販促物は、
アテンション力、リマインド力(広告、生活からの)、商品理解力、比較力、ワクワク感の5項目を作り、ショッパー側からみた評価指標をつくります。
売り手の視点設計と買い手の視点設計

売り手の視点設計と買い手の視点設計

さて、ここからが重要です。

テレビ広告、ラジオ広告、雑誌新聞広告、web広告など、広告はその情報が発信されている間、それを受けているターゲットとは1対1です。
しかし、店頭での発信は上下左右で競合商品が同様に発信をしています。ターゲットに対して複数対1の状況になります。

よって、ベンチマークする競合商品の売り場を『売り手の視点設計』と『買い手の視点設計』で分解する必要があります。
その上で、自社商品の4つの価値のうちどこにプライオリティを置いて、文字やイラストで配置していけばいいのか、また、その配置や表現はターゲットにとって、興味喚起されるのか、分かり易く買いやすくなっているのかを評価して、相対的に競合商品の売り場に勝てているかどうかをポイントとして設計をしなければなりません。

キーメッセージ開発

店頭での情報発信ということで、上記店頭分析の説明をはじめに持ってきましたが、
それ以前の根幹として重要なことは、キーメッセージの開発です。

what to say = 伝えるべきこと

その商品のUSP(ユニークセリングプロポジション)をどのように伝えるのか?
はたまたベネフィットは何なのか?

市場状況や市場価値やターゲットによって伝えるべきことは変わります。

・事実を伝えるのか?(機能・特長)
・メリットを伝えるのか?(具体的な便益)
・さらに踏み込んだベネフィットを伝えるのか?(それがもたらす豊かさ)
炊飯器の場合、どう考えていけばよいのか?

炊飯器の場合、どう考えていけばよいのか?

例えば、炊飯器のキーメッセージにも色々あります。

商品の機能説明と新しさを推したメッセージをターゲットに突き刺したい場合は
①新しい〇〇機能がついた炊飯器です。

商品の使われる目的とさらにその目的遂行が容易になるという便利さのメッセージをターゲットに突き刺したい場合は
②この炊飯器なら、他と違ってだれでも上手にご飯が炊けます。

より情緒的で商品によってもたらされる人物像や豊かな世界を表現するメッセージをターゲットに突き刺したい場合は
③この炊飯器ならあなたは賢いママになれます。


という3つの表現ができます。
上記では「ターゲットに突き刺したい」という表現を使いましたが、この人達に売る・売れそうと選定したターゲットに効きそうなメッセージをしっかり考えるということが重要です。

オリエン資料

事前に上記の点を講義した上で
学生さんには1カ月前くらいに課題制作とワークショップガイドを渡しました。

各社メーカー様に事業説明をし、ご了承を頂いて課題は下記の3つに設定致しました。

■江原道様 『クレンジングウォーター を定番上段w400×H450×Ⅾ300㎜内で演出』

■オーディオテクニカ様『ノイズキャンセリングヘッドホン を家電量販店でw890×H550×Ⅾ400㎜内で演出』

■ブルボン様『フルーツ系カップゼリー6種 をスーパーのエンド1本で演出』

学生さん7人でそれぞれ班分けをして、この3つの課題に対して店頭分析をしながら、ワークショップ当日に臨むという形式でディスプレイ研修は始まりました。

参考例

1例ではありますが、
江原道様のクレンジングウォーターの競合商品を、
売り手視点で分解し、
買い手視点で評価し、

さらにその商品自体の現状売場を、
売り手視点で分解し、
買い手視点で評価し、
店頭ではどのようなメッセージを組み立てることが重要かを考察します。
これがワークショップまでの事前準備となりました。

もちろん、正解はありません。
売れればそれが正解です。
しかし、状況を把握して、目的を明確に、伝えたいことを定めて、より効果的に発信をするために、ある程度理論立てて、構造的に積み上げていくことは重要な作業だと思っています。

店頭販促の世界では、よく、「答えは店頭にある」と言われますが、売場がどうなっているか、競合商品がどういう発信をしているか、を把握してこそ、売りたい商品を売るためのデザインができると思います。
商品の店頭分析

商品の店頭分析

競合商品の店頭分析

競合商品の店頭分析

競合商品の店頭分析

競合商品の店頭分析

商品と競合商品の店頭分析をした上で、
では、この商品をどのように店頭で発信していけばいいか、どのような店頭販促物にしていけばいいかの方向づけ表を作ります。
提案に対する方向づけ

提案に対する方向づけ

第二回に続く。

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