2018年9月28日 更新

コンテンツの創造がプロモーションにもつながる、中国時価総額3位の会社の考え方

中国時価総額3位の平安保険は、2億人近くが会員のアプリを持つIT企業という側面がある。しかしそれはITで純粋に儲けよう、ビジネスをしようという気持ちから生まれたわけではなさそうだ。日経電子版の記事を振り返りながら、プロモーションにもつながるコンテンツの重要性を探りたい。

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事業の本質を追求する

プロモーション推進やコンテンツ創造は事業の一部であり、主力事業と補完する考え方が重要。

その意を強くさせられたのがこの記事だ。

<この記事のポイント>

・中国の非国有企業ではアリババ集団、騰訊控股(テンセント)に次ぐ時価総額3位を誇るのが保険会社の平安保険。
・平安保険の主力事業は保険業であり、通常は契約した後、事故や病気にならないとほとんど接点はない。→そこは日本の保険会社と同様だ。
・これを事業上の損失につながる可能性があると考えた平安保険は、デジタルサービスの自社開発や買収によって、医療、移動、住居、娯楽といった生活圏にサービスを拡大していくことで、顧客接点を得るという戦略を取った。
筆者は実は昔から、日本の生命保険になにがしかの違和感を覚え続けていた。

・なんであんなにたくさんの生保レディが雇えるのだろう?
・多くの生保レディは、売り込むまでは一生懸命だが、その後支払いが止まるなどのケースを除き、連絡はない。かといってサポート業務を行う他の部署があるわけでもない。
・内情を聞くと、売れている生保レディにはコミッションが大きい。
・生保レディを支える男性管理職などのほうが高給、しかし、仕事内容を聞くとそう魅力的には思われない気がする。(筆者の知り合いは「おばちゃんの話を聞いていればいいんだよ」と、はっきり言っていた。)
だがしかし、この記事を読んで何となく疑問が解けた。
セールスレディには深く顧客に入り込めるチャンスがある。

セールスレディには深く顧客に入り込めるチャンスがある。

多くの生保レディを雇えていたくらいだから、生命保険会社というのは景気が良ければよいほど高収益なのだろう。特に昔はそうだったわけだ。バブル前後の米国株を一番買っていたのは、日本の保険会社だったそうだ。つまり高収益な体質を活かして利益を回していたわけだ。

異論があるかもしれないが、筆者としては、保険会社が金融運用をすること自体は良いと思う。運用して増やすという営みは金融に関連する企業としては当たり前だし、運用資産が多ければ多いほど、金融運用の世界では増やしやすいからだ。

しかしながら、生保レディになぜ少なくない給与を払いながら(実績にもよるが)もしくはさらに上乗せ分を払いながらでも、契約後の顧客メンテナンス業務をしてもらわなかったのだろうか?という疑問は残る。

なにも中国の平安保険のようにアプリである必要はないと考える。平安保険がITに投資した分程度の上乗せ予算を作り、それにより生保レディが契約した顧客に電話したり、プライベートな相談に乗ったりするような仕組みにしなかったのかはやはり疑問だったりする。(金融法上の問題もあるのかもしれないが…)

それこそ、中年女性が多い生保レディにとって、顧客離れを防ぐなどの大きな価値を生む可能性があったのではないだろうか。
平安保険は顧客との密なコンタクトポイントを失うのを恐れた。それは結果アプリとなったが、それは経営者の顧客に寄り添う気持ちから生まれたものかもしれないし、競争の激しい中国市場だからこそ必要と考えたものなのかもしれない。

コンテンツや事業上の工夫はプロモーションにもつながる

平安保険の運営コンテンツ(アプリ)

医療・健康支援アプリ「平安好医生」(グッドドクターアプリ)
自動車メディア「汽車之家」(汽車の家)
マイカー管理アプリ「平安好車主」(カーオーナーアプリ)
決済とEC機能を持つ「壱銭包」(ワンウォレットアプリ)
カーローン機能を含む家探しアプリ「平安好房」(グッドハウスアプリ)
平安保険は実に多くの顧客との接点をアプリによって実現している。

それは、保険とは一見関係のなさそうなものも含まれる。顧客が欲しいはずの情報を作ることに腐心した結果のように思える。

特に人気なのが、1億9700万人もの利用者がいる、良い医者とつながることができるグッドドクターアプリ。
医療情報が入り乱れ、医者の腕にも差がある中国の社会背景もありヒットしているようだ。

コンテンツ主導でのプロモーション

独自性があり、社会ニーズの強いサービスは、PRやプロモーションにも上手くつながる。

良いコンテンツだと、プレスリリースを出したらメディアも反応しやすいし、広告を打つにしても反応が良いクリエイティブを作りやすい。

平安保険の戦略は、保険業の本質をとことん考え、その結果として時代的に良いコンテンツ(=アプリ)を展開することを選択し、それを丁寧に実行したのだと言えるのではないだろうか。
プロモーションとコンテンツ展開は両輪の関係、というよりむしろまず良いコンテンツを作る方が重要、ということを改めて感じさせてくれた記事だった。

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