2024年4月8日 更新

【最終回】ニューヨーク店頭レポートシリーズ RETAIL POWER IN NYC vol.7 エピソード3

7回目になるニューヨーク店頭レポートシリーズ RETAIL POWER IN NYC。世界の中心とも言われるニューヨークの様々な販売チャネルの店頭を洞察してきた。これでニューヨークシリーズは最後である。

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ニューヨーク店頭レポートシリーズ 最終回

3月、冬から春へと季節が移行する狭間のニューヨーク。
現在の店頭は極めてニュートラルな状態。季節色のある
プロモーションやセールといった特別な動きはない。

しかし、本レポートがスタートした2022年と比較して
売り場の空気が違う、活気が満ちている。

活気の正体は“人の会話”だった。

顧客と店員
顧客と顧客
店員と店員

人が言葉を交わしている。

コロナ禍で店頭から一時消えたもの。デジタルの台頭によるオムニチャネル化が進み、人の役割は縮小されるのかと思われたが、小売の現場における人の役割は、
むしろ明確化されたように見える。
これまで観察を続けてきたニューヨークの店頭は、
合理的の一言に尽きていた。

クリスマスやハロウィン以外のセールに関してはウェブやアプリでのプロモーションをメインにし、店頭では他のシーズンでも使い回せる「SALE」の表示だけでプロモーションを済ませ告知物の制作コストを下げる。

BOPIS・セルフレジの導入も迅速に行われるなど
必要なところに、必要なだけの労力を割き、
他は切り詰め、研ぎ澄ます印象のマーケットだった。

そんなニューヨークの店頭に“人”が戻っている。
物を買うならネットで十分。
高額な人件費はリスクである。
しかし、ニューヨークの店頭から“人”は排除されない。

ニューヨーク店頭洞察の総括として、店頭における“人”の役割を改めて洞察する。

店員×店員

 (8677)

ニューヨークの店頭では、店員同士の会話もよく見かける。

業務上の会話から、おそらく雑談と思われる会話で、店員同士が盛り上がっている光景も多々。

しかし、それが現場に活力をもたらしている。

人と人が意思疎通を図る。
そのエネルギーの交流が、店頭を明るくしている。
雑談=悪という文化がないため、嫌味がない。

雑談=悪という文化がないため、嫌味がない。

店員同士の笑い声を聞くと、明るい印象を受ける。

店員同士の笑い声を聞くと、明るい印象を受ける。

人がいること。その明るいエネルギーこそが店頭の存在価値。

 (8680)

要所要所に人が際立つ、小売の現場。

入退店する客へ、挨拶をする役の
スタッフが配置されているCVS。

アマゾンの傘下に入って以降、システムのデジタル化が進む
ホールフーズのカスタマーサービスブースにも、必ず人がいる。

人は、人を感じることで安心する。

その存在が与える安心感と、その先の会話で生まれていく
明るいエネルギーこそが、ネットにはない
店頭にしか存在しない価値だと言える。
セルフレジコーナーにも、案内役が常駐。

セルフレジコーナーにも、案内役が常駐。

絶え間ない品出しで 2022年にはガラガラだった生鮮食...

絶え間ない品出しで 2022年にはガラガラだった生鮮食品も充実。

生鮮食品が満たされているとフレッシュな印象。

生鮮食品が満たされているとフレッシュな印象。

自動化が進むカウンターも、人がいることで安心感がある。

自動化が進むカウンターも、人がいることで安心感がある。

人がいる場所に、人は集まる。

人がいる場所に、人は集まる。

店員が遊んでデモンストレーションをする。

店員が遊んでデモンストレーションをする。

長らく閉まっていたデリのコーナーに人が戻った。

長らく閉まっていたデリのコーナーに人が戻った。

人が立つことで、コーナーに特別感が出る。

人が立つことで、コーナーに特別感が出る。

レジ待ちの最後尾の旗を持つ人。

レジ待ちの最後尾の旗を持つ人。

ポイント、ポイントでスタッフが列を整える。

ポイント、ポイントでスタッフが列を整える。

まとめ

ニューヨークは極めて合理的な街だ。
2022年から観察を続けてきた今でもその印象は変わらない。

しかし、世界で見ても異例の高額な人件費がかかるニューヨークでも、
店頭に人が戻っている。

なぜか。
それが最も合理的な判断だからだ。

人にしか生み出せない安心感がある。
人にしか生み出せないエネルギーがある。

人は、人を呼ぶ。
人のいないところに、人は集まらない。

店頭ににぎわいをもたらし、買い物体験に
喜びと安心をプラスする。

AIが台頭し、自動化が進む現代だからこそ、人という究極のアナログが放つエネルギーの価値と役割を見極める。新しいテクノロジー・サービスとの組み合わせを意図的に設計していく。そうでなければ売り場から活気と鮮度は消え、小売の現場は無機質で退屈なものになっていくだろう。

淘汰の最先端をゆく厳しいニューヨークの小売現場は、
効率化・自動化の真逆をいくことも、また、
合理的かつ必要不可欠な判断なのだと教えてくれている。

次号より本レポートはアメリカ西海岸に舞台を移し、
東海岸との違いも交え、より複合的な観点から
小売の現場に求められていることは何かを洞察していく。

了。

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