2019年3月26日 更新

桜美林大学と産学連携!「第2回ディスプレイ研修合宿」レポート1

作年に続き、今年も桜美林大学造形デザイン科の学生5名に、店頭販促の講義とワークショップを通じて、セールスプロモーション業界への理解を深めてもらう取り組みとして、産学連携の「ディスプレイ研修合宿」を行いました。

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2019年2月25日~27日の3日間、
株式会社ボンビでは昨年に続き、ボンビゴシップにも執筆を頂いている、向坂氏が講師をされている桜美林大学造形デザイン科5名を大阪本社に迎え、ディスプレイ研修を行いました。目的は、産学連携での新たな視点や発想の模索と、SPツールの企画製造分野の普及と人材育成をはかるためです。
造形デザインに対してプロの視点での講座を聞くことができ、また、ワークショップを行うことで知識を得て仕事感覚を養ったりすることができる研修ということで、今年参加された学生さん達も十分な熱量を持って研修に臨まれていました。

その内容を3回に分けてレポートしていきたいと思います。

事前研修 店頭の因数分解

2月末に研修合宿を実施するため、2月6日に事前研修ということで、大学に伺い2時間ほど時間を頂き、店頭プロモーションの考え方の講義と、制作課題のオリエンテーションを行いました。

昨年のボンビゴシップ記事にも書きましたが再度「店頭の因数分解」を記させて頂きます。

店頭分析

店頭分析には立地マーケティングやVMDにまつわる様々な要素が含まれますが、ここでは、小売り(店舗)側ではなく、商品が発信するコミュニケーションという分析をしていきます。
売り手の視点設計、買い手の視点設計

売り手の視点設計、買い手の視点設計

個のブランドや商品の「店頭展開」を分析する場合、どこからアプローチをすればいいのでしょうか?
よく各社が作る提案書の前段を見ると、店頭写真を並べて莫っとしている評価が多いように思います。
莫っとした評価はどうなるかというと、どのカテゴリーの売場を切り取っても、まとめとして、同じような評価になってしまいます。「賑やかしに欠ける」、「商品訴求ができていない」、などです。これだと良し悪しがよく分かりません。
媒体広告などは、情報の伝達はその場の自分と発信している広告とで1対1になります。
例えば、テレビを見ているとCMが流れます。聞いている聞いていないは別にして、その15秒ないし30秒はその画面と対象者は1対1の関係で情報を受けます。
店頭はそうではありません。
上下左右に同じく情報を発信している商品がひしめいています。ターゲットに対して多対1の構図になります。
もちろん、賑やかな演出の方がアテンション力が高まり、目がいきます。ただし、そこから手に取り、さらに買ってもらうためにはどのような演出が必要かということを、店頭販促物に求めることが重要です。そのアプローチには様々な方法があるのですが、ここでは、

●売り手の視点設計
●買い手の視点設計

と切り分けて考えています。

この先に「売り手と買い手の双方向の視点設計」があるのですが、そこがデジタルプロモーションの領域となります。店頭販促物とデジタルプロモーションの融合は非常に重要なのですが、そこまでやると非常に時間がかかりますので、今回はアナログの販促物までにとどめています。

売り手の視点設計

売り手の視点設計では、パッケージをデザインする際に用いられる
●情報性価値
●識別性価値
●機能性価値
●情緒性価値
がしっかりと伝えられているかどうかがポイントとなります。

この価値伝達をどのように強弱をつけて行えているかが、デザインの力になります。
そして、パッケージデザインでは語ることができないことを発信するのが店頭販促物のミッションとなります。
パッケージを手に取ってもらうために、どのようなことが発信されているかを、上記の4つの価値伝達ということに注目して解体することが重要です。

これは、コピーのみではありません。全体のフォルムデザインから受ける価値伝達もありますし、色づかいから受ける価値伝達もあります。
特に視覚のみならず、聴覚、嗅覚、触覚などで受ける価値伝達はインパクトが強くなるとともに、理解促進に大きな影響を与えます。ですので、体感ツールと呼ばれる店頭販促物は重宝されています。
その商品にとって、ターゲットに届くためにはどの価値をしっかり伝達できているべきかを、売り手の視点設計でしっかり考えましょう。

買い手の視点設計

買い手の視点設計は、売り手の視点設計を、買い手側がどう評価するかという視点になります。
何年も前に電通さんが提唱された購買行動プロセスARCAS理論に落とし込むと分かり易いと思います。
A:Attention
R:Remind
C:Compare
A:Action
S:Satisfaction

アテンション(気づき)があり、
「ん?むむ?」と興味が出て
広告や、生活の中からのリマインド(思い出し)があり、
「あ~、そういえば」と商品に対して思考するスイッチが入ります。

しかし、思考には周りの様々な商品の情報発信が入ってきます。
「違う店だったら・・・」、「ECでだったら・・・」などという外部状況も吟味されます。
そこで、こちらの方があなたにとって「より価値がありますよ!」と商品理解をしてもらって、コンペア(比較)ができることが重要です。
商品理解できない商品は比較対象に入りません。

もし、競合商品の店頭演出のアテンション力とリマインド力がターゲットを呼び寄せるきっかけとなったとしても、その競合商品の上下左右にいて、比較をされた場合に、我が商品の商品理解を促進して、コンペアの結果、我が商品を手にとってもらうことも可能になります。

アクションは購買行動ともとれますが、最後の後押しの一手である特典があるかどうかという部分の意味にもなります。増量パックや値引き、さらにはおまけがついているなど、特典があり、「今買うべき理由」を正当化してくれるかどうかも購買行動プロセスの中では重要なポイントです。

店頭訴求は、「自分ゴト化」が非常に重要ですが、
お金を払ってこの商品を選ぶという、自分の判断を正当化してくれる要素も必要となります。

購入した後、その行為、その商品を使用してみてサティスファクション(満足)ができれば、継続購入の可能性が生まれます。使用に関しては「商品力」が影響しますが、購買行動の満足度は店頭販促で生み出すことができる可能性があります。
例えば「環境負荷の低減に貢献できた」とか、「セットパッケージが2次利用できたり、インスタ映えする」というようなことがサティスファクションを生むことになるかもしれません。
しっかりと組み立てた「売場の視点設計」を、「買い手の視点設計」で評価する。
そして、競合の店頭展開と比較して再度評価をする。
ということが、店頭分析、または店頭販促物のデザイン設計において重要なポイントだと思います。

店頭リサーチ

上記内容を講義し、その上で制作課題のオリエンテーションをして、学生さん達には「ディスプレイ研修合宿」当日までに「店頭リサーチとまとめ」を行って頂きました。

制作課題

今年も江原道株式会社様にご協力頂きまして、江原道様のリップ商品のテスターを陳列するW450㎜×Ⅾ250㎜×H200㎜のサイズ以内のカウンター什器を制作課題としました。
商品陳列まですると、難易度が高いため、今回はテスターの陳列什器としました。
限定品を1品入れて、どのように表現をするかという少し意地悪な制作課題にしました。
さらに、ターゲットのインサイトを考察し、
ファクト、メリット、ベネフィットを抽出し、「what to say」をしっかり考えて「キーメッセージ」を打ち出し、デザインのトーン&マナーを設定することも講義をして、前段の課題としました。「what to say」を考えてどのように「how to say」を考えるかという部分が重要なのですが、せっかくなので、学生さん達には自分達が考えた「what to say」を反映させるクリエイティブキャラクターとしてどのようなタレントさんをキャスティングすればいいかまで考えて頂きました。
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<課題条件>
・展開場所:コスメ系バラエティショップ
・陳列条件:テスターを1本ずつ展示
・訴求条件:ロゴ、タレント入り、品名記入、色名記入、色訴求、仕上がり訴求をマストで入れる。

<評価ポイント>
・陳列レイアウトと訴求のレイアウト
・前段から一気通貫したロジック展開。what to say→how to sayの形状とデザインとタレント選定
・「売り手の視点設計」で4つの価値伝達を明確化し、「買い手の視点設計」でその価値を購買動向プロセスの「アテンション」、「リマインド」、「コンペア(商品理解含む)」のそれぞれの
段階で競合商品と比べて良い評価ができるかどうか。

などのようなことをオリエンテーションさせて頂きました。
以上が、事前講義の内容になります。

次回は実際の「ディスプレイ研修合宿」の模様をアップしたいと思います。

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