2023年6月19日 更新

ニューヨーク店頭レポートシリーズ「オムニチャネル施策」 RETAIL POWER IN NYC.  第3回 Whole Foods Market /Trader Joe'sの店頭洞察 

ニューヨーク店頭レポート第4弾。「オムニチャネル施策」を考察します。3回目は、「Whole Foods Market」と「Trader Joe's」の店頭を洞察します。

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スーパーマーケット Whole Foods Market /Trader Joe's 店頭洞察

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コロナパンデミックにより、
急速に進んだ小売のオムニチャネル化。

あらゆる企業がデジタルを織り交ぜたサービスを開発し、
デジタル化が急速に進んだ、という見方がされがちだが
それは本質だろうか。

一連の変革の中で注目すべきは、各企業のサービスが、
”人々の選択肢”に合わせて進化することを求められた点だとみる。

パンデミックにより外出に制限がかかった。
結果、買い物に出かけるという選択肢が取れなくなった人々は、
フードデリバリーを利用する、デジタル通販で物を買う
といった行動を加速させ、その流れに適合した企業が生き残った。

コロナの影が忘れられつつあるニューヨークの店頭には
人が溢れてきている。

アナログの象徴ともいえる店舗での体験は、
デジタルに駆逐されていない。

デジタルはアナログの上位互換ではなく、
あくまで多様化する顧客の選択肢に適合する手段の一つだ。

アフターコロナの小売には、デジタルとアナログを併用した
顧客体験の向上が求められている。

今号は、ニューヨークで展開される企業のオムニチャネル施策に焦点を当て考察する。

Whole Foods Market /Trader Joe's 店頭洞察

Whole Foods Market

ウォールフーズ・マーケットは、アメリカ合衆国のグロサリー・ストアチェーンである。
アメリカ合衆国を中心に、カナダとイギリスを含めて、合計270店舗以上を展開している。
グルメ・フード、自然食品、オーガニック・フード、ベジタリアン・フード、輸入食品、
各種ワイン、ユニークな冷凍食品も品揃えし、いわゆる「グルメ・スーパーマーケット」と呼ばれる比較的高級志向の食料品小売店に分類されている。

Trader Joe's

トレーダー・ジョーズは、ロサンゼルス郡を本拠とする、アメリカ合衆国のグロサリー・ストアチェーン(食料品スーパーマーケット)である。
日本人が付けた通称はトレジョだそうだ。
2015年には「生鮮食品店」形式の総合食料品店に数えられるようになる。
展開は全米42州とワシントンD.C.に500店舗ほどである。
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Whole Foods Market /Trader ...

Whole Foods Market /Trader Joe's 店舗

日常生活に欠かせない商材を扱う
スーパーマーケット業界において、
Whole Foods と Trader Joe's の展開は対照的だ。

親会社であるamazonのシステムやサービスと連携し、
デジタルを組み合わせたサービスを展開する
Whole Foodsと

どこまでも”人”を中心に運営するTrader Joe's

アメリカを代表するスーパーマーケットとして
人々の支持を集める両社の展開を考察していく。

デジタルにより便利を提供する Whole Foods Market

Whole Foods Market オンライン

Whole Foods Market オンライン

通常の店舗での買い物とは別に、amazon prime会員限定のサービスとしてオンラインオーダーによるデリバリーやBOPIS(BuyOnline, Pickup In Store)といったウェブ上のサービスをはじめ、

店内においてもWhole Foodsはデジタルで
統制されている印象を受ける。

amazon注文品の受け取り・返品の場としても
利用できるためamazonの買い物体験を向上させる
物理チャネルとしても機能し、
デジタルとアナログの相乗効果を生んでいる。
Whole Foods Market 店舗

Whole Foods Market 店舗

レジの呼び出しもデジタル。
Whole Foods Market 店舗

Whole Foods Market 店舗

Whole Foods Market 店舗

Whole Foods Market 店舗

イートインスペース用の軽食もパネルで注文可。
Whole Foods Market 店舗

Whole Foods Market 店舗

amazonの返品も全自動。
返品のついでにお店に行く理由としても機能。

どこまでも”人”が主役の Trader Joe's

Trader Joe's オンライン

Trader Joe's オンライン

Trader Joe'sのウェブサイトには
BOPIS(BuyOnline, Pickup In Store)やデリバリーなどのサービス
は存在しない。

商品情報や自社商品を使ったレシピ
が載っているなど、旧来のいわゆる
ホームページといった印象。

あくまでデジタルは店舗での買い物
をサポートするもので、
自社の主力は現場であり人である
というスタンスが伺える。


自社のポッドキャストチャンネルが
載っているなど、
デジタル上でも”人”を感じさせる
事に重きを置いている。
Trader Joe's 店舗

Trader Joe's 店舗

とことんマンパワーで回る現場。

Trader Joe'sの店内には忙しく品出しをする
スタッフに加え、常にフリーのスタッフが巡回している。

彼らは忙しくても常にフレンドリーで商品の種類・場所を熟知している。

これは商品の場所を聞いても「知らない」とスタッフに
いわれることが常のアメリカにおいて大変貴重なことだ。人材の質を統一し、いつでも気持ちのよい買い物ができる体制をとることで「フレンドリーなお店」というブランドを保ち続けるTrader Joe's。

大切なことは”デジタル化”することではなく、
求められていることを、求められているタイミングで
行うことだと教えてくれる。
Trader Joe's 店舗

Trader Joe's 店舗

電子端末やQRコードすら存在しない店内。
Trader Joe's 店舗

Trader Joe's 店舗

レジの振り分けも脚立に乗ったスタッフが行う。
スタッフが常に巡回。商品の場所もすぐに教えてくれる。
Trader Joe's 店舗

Trader Joe's 店舗

デジタル化をすすめるWhole Foods Marketとマンパワーを大切にするTrader Joe's

Whole Foods Marketはデジタル化をすすめている。
対して、
Trader Joe'sはマンパワーにこだわる。

デジタル化は効率的に見えるが、アナログは人の稼働があるものの活気に溢れるし、
人対人の対話から感じる、優しさや親切さがあり、心が動く瞬間があるかもしれない。

まとめ

ニューヨークにて展開される小売のオムニチャネル施策。

その実態を読み解くと、デジタルは手段の一つに過ぎず
その場、その場で顧客が求める内容に合致する
選択肢を提示していくことが重要だと気付かされる。

コロナ禍は外出を制限し、人々からいくつかの選択肢を奪った。
しかし、それは同時に新しい選択肢も提示した。

デリバリーサービスの普及により、富裕層でなくとも
買い物は自分で行かなくていいようになった。

店頭に商品を買いに行きつつも、デジタル決済で
レジ待ちをしない選択も可能だ。

パンデミックが終わりを迎え、
「〜してはならない」という制限は、
「〜してもいい」という選択肢へと形を変えている。

各企業は、細分化されている人々のニーズの中から
新しい選択肢を自社のブランド・業態に求められている形で
提示することが不可欠な時代となっている。

コロナ禍が去った今こそ、
小売には今までに戻るのではなく、
変化することが求められている。

了。

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bonbi GOSSIP 編集部 bonbi GOSSIP 編集部
   
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