2023年6月14日 更新

ニューヨーク店頭レポートシリーズ「オムニチャネル施策」 RETAIL POWER IN NYC.  第2回 CVS/DUANE READEの店頭洞察

ニューヨーク店頭レポート第4弾。「オムニチャネル施策」を考察します。2回目は、「CVS」と「DUANE READE」の店頭を洞察します。

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ドラッグストア CVS/DUANE READE 店頭洞察

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コロナパンデミックにより、
急速に進んだ小売のオムニチャネル化。

あらゆる企業がデジタルを織り交ぜたサービスを開発し、
デジタル化が急速に進んだ、という見方がされがちだが
それは本質だろうか。

一連の変革の中で注目すべきは、各企業のサービスが、
”人々の選択肢”に合わせて進化することを求められた点だとみる。

パンデミックにより外出に制限がかかった。
結果、買い物に出かけるという選択肢が取れなくなった人々は、
フードデリバリーを利用する、デジタル通販で物を買う
といった行動を加速させ、その流れに適合した企業が生き残った。

コロナの影が忘れられつつあるニューヨークの店頭には
人が溢れてきている。

アナログの象徴ともいえる店舗での体験は、
デジタルに駆逐されていない。

デジタルはアナログの上位互換ではなく、
あくまで多様化する顧客の選択肢に適合する手段の一つだ。

アフターコロナの小売には、デジタルとアナログを併用した
顧客体験の向上が求められている。

今号は、ニューヨークで展開される企業のオムニチャネル施策に焦点を当て考察する。

CVS/DUANE READE 店頭洞察

CVS

CVSはアメリカ最大の薬局チェーンの1つで、全国に9,800店ほどを展開している。
CVSケアマークの小売り薬局部門として、CVS/ファーマシー、ロングスドラッグスといった小売店およびcvs.comによるオンライン販売を通じ、処方薬のほか、美容用品、化粧品、写真現像、季節商品、グリーティング・カード、食料品といった一般商品を販売している。
また、MinuteClinic、Diabetes Care Centersを通じて、健康管理サービスも提供している。

DUANE READE

デュアン・リードは、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが所有する薬局、ドラッグストアチェーン。店舗は主にニューヨーク市に多く、人口密度の高いマンハッタン内最大手のドラッグストアだ。
最初の店舗があったデュアンストリートとリードストリートの2つの名前から「デュアン・リード」と名付けられている。

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスとは、アメリカ合衆国・イリノイ州・ディアフィールドに本社を置き、ドラッグストアの運営を中心に、健康サービス事業を展開する持株会社である。
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CVS/DUANE READE  店舗

CVS/DUANE READE 店舗

ドラッグストアは、デジタルとの相性がいい業態といえる。

楽しむための買い物というよりは必要なものを揃えにいく意味合いが強く、検索によって目当ての商品をすぐ見つけられる方が顧客にとっての利便性が高い。

CVSとDuane Reade、異なるグループにも関わらず、オムニチャネル施作においては、両社は全く同じといっていいほど似通っている。

・BOPIS(BuyOnline, Pickup In Store)により店内を探し回らず買い物が可能。

・処方箋をデジタル登録すれば、店頭でやり取りせず
 準備できた段階で薬を取りに行ける。

・店内商品は、アプリでバーコードをスキャンすることで
 詳しい情報を見ることができる。

これらは顧客がドラッグストアという業態に求めることが基本的に一定であり、両社が他方に遅れまいとそれに応えていっていることの証左だろう。

しかし、利便性に差がない以上、どちらの店舗に行くかは
立地と価格がものをいう。が、その2点も大差がないのが現状である。

両社は互いに次の一手を模索している状態と見える。

待ち時間なしの処方箋薬

CVS/DUANE READE  店舗

CVS/DUANE READE 店舗

薬を受け取るまでの時間は短ければ短いほどいい。
ネットで処方箋を登録し、
薬がカウンターに準備できた段階で通知が届く。

あとは店舗にいって受け取るだけでいい。
楽しい買い物とは対極にあるといえる”薬”に関する
極めて合理的なサービスといえる。

また、配送も行っており、
最短で当日に薬を家まで届けてくれる。

自分のペースで知りたい情報を調べる

CVS/DUANE READE  店舗

CVS/DUANE READE 店舗

店頭にてアプリを起動。
商品バーコードを読み取ることで、ウェブサイトの
商品ページに移行できる。

・商品の詳細(使い方・成分)
・商品レビュー
・商品がクーポンの対象かどうか

という情報を気になったタイミングで
スタッフを探しまわることなく知ることができる。

物理店舗の強みを活かした プリントサービス

CVS/DUANE READE  店舗

CVS/DUANE READE 店舗

デジタル全盛の時代とはいえ、ちょっとしたプレゼント等で
印刷した写真がほしいタイミングがある。

そんな時に、ネットでデータを入稿して店舗で
即日プリントアウトができるサービスは使い勝手が良い。
※現地でスマホからデータを端末に送信することもできる

店舗によってはポスターのプリントに対応もしており、
小ロットの印刷では、印刷専門の業者よりもスピードと
発注の気軽さの面で大きくアドバンテージがある。

サービスがコモディティ化している現在
物理的な店舗の強みを活かした他業種とのコラボレーション
は増えていくと考えられる。
CVS 店舗

CVS 店舗

値段のチェックやクーポン発行ができる端末。
CVS 店舗

CVS 店舗

店員の呼び出しベルも設置されている。
CVS 店舗

CVS 店舗

セルフレジと有人レジの割合は半々。
DUANE READE 店舗

DUANE READE 店舗

レジだけは、差がありDuane Readeにはセルフレジがない。
DUANE READE 店舗

DUANE READE 店舗

現物をその場で見て選ぶアナログよりのアイテムは、
デジタルサービスに対応していない。

まとめ

ニューヨークにて展開される小売のオムニチャネル施策。

その実態を読み解くと、デジタルは手段の一つに過ぎず
その場、その場で顧客が求める内容に合致する
選択肢を提示していくことが重要だと気付かされる。

コロナ禍は外出を制限し、人々からいくつかの選択肢を奪った。
しかし、それは同時に新しい選択肢も提示した。

デリバリーサービスの普及により、富裕層でなくとも
買い物は自分で行かなくていいようになった。

店頭に商品を買いに行きつつも、デジタル決済で
レジ待ちをしない選択も可能だ。

パンデミックが終わりを迎え、
「〜してはならない」という制限は、
「〜してもいい」という選択肢へと形を変えている。

各企業は、細分化されている人々のニーズの中から
新しい選択肢を自社のブランド・業態に求められている形で
提示することが不可欠な時代となっている。

コロナ禍が去った今こそ、
小売には今までに戻るのではなく、
変化することが求められている。

了。

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bonbi GOSSIP 編集部 bonbi GOSSIP 編集部
   
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