2018年11月9日 更新

楽天とKDDIの事業提携

キャリアへの値下げ圧力の中、第4極を目指す楽天が、他事業の拡大を狙うKDDIとの事業提携を発表した。KDDIのローミングネットワークを利用することで、大規模投資が必要な自前ネットワークを構築する時間に猶予をもらえるようだ。双方の将来はどうなるのだろうか?

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KDDIと楽天の事業提携スキーム

プレスリリースによれば、楽天は自前の通信網を最初から全国規模で展開することなく、自社ネットワークは主要都市部のみで、それ以外のエリアではKDDIのネットワークを借りる(ローミング)ことができる。(2026年3月末まで)
それにより、楽天は全国規模のネットワークを自前で作るための時間を稼ぐことができるのだ。

対して、KDDIのメリットはなんなのだろうか?

KDDIは、楽天から「決済・物流基盤の提供」を受けられるとされているが、どうも内容が判然としない。

KDDIの高橋社長にインタビューしている良記事があった。
記事によれば、本音のところはざっとこうだ。

・どのみち、自分たちが貸し出さないとドコモが貸し出すことになり、ローミング料が手に入らない。
・決済物流基盤の提供だが、安ければそれを使うが、是々非々で対応する。まだポイントの交換レートなど踏み込んだ話は進んでいない。
いずれにしても、どこかがネットワークを貸し出すのは既定路線で、そのローミング料が必ず入るので、それを取りに行った。決済物流基盤に関しては、ケースバイケースで経済合理性があれば利用したいということのようだ。

つまり、双務契約というよりは、まずローミング連携ありきの片務契約のようなものと考えられる。

楽天側のメリット

楽天側のメリットは言うまでもない。2019年10月に開始が予定されている携帯電話サービスにおいて、主要都市部以外の基地局はKDDIのネットワークを借りることができることは大きい。(2026年3月末まで)

その大規模なネットワーク投資にかかる時間猶予を7年近く稼ぐことができるのは経営上もかなりのメリットだ。基地局投資の総額を想定した時、7年のリースを組んだくらいの財務メリットがあるだろう。

この第4極から入り込んで、他のプレイヤーをけん制していく手法は、ボーダフォンから携帯電話会社を譲り受けたときの孫氏の手法に似ているところがある。

あの時孫氏は第3極のポジションを明確化し、他の2キャリアをけん制しながら「新機軸の料金プラン」を打ち出したり、「端末料金の割賦払い」をいち早く導入したり、ユーザーを満足させながら「つながらないソフトバンク」と言われたネットワークを順次整備していったことが思い出される。

第4極として、その中ではもっとも経営・財務基盤が十分ではない楽天という見せ方を演じつつ、官の共感を得て、ドコモやKDDIがネットワーク貸与を検討せざるを得ない形に持ち込んだ三木谷氏の政治的手腕の賜物と言えるのではないだろうか。

KDDIのメリット

この際、決済・物流基盤連携とは、まだ体をなしていない、ということも言えるだろう。体をなしたとしたらそのタイミングで、また別の踏み込んだ形でのプレスリリースがあるはずだ。

だが、今回の事業提携が片務契約で楽天寄りのメリットが大きかったにせよ、KDDIは少なくとも7年近く楽天からローミング料を受け取ることができるのは事実だ。それはドコモもソフトバンクも受け取れない新規事業売上ではある。
KDDIの高橋社長は冒頭に上げた記事の中でこうも語っている。
「楽天はIT企業なので、話が速い。海外の投資や人材育成など見習うべきところも多い」

楽天の企業風土と近いところで活動(業務提携)することで、自社の社員が触発されたり、経営や事業運営手法で参考にすべきところがあるとみているようだ。
長い目で見たら、どのキャリアも新規事業売り上げを上げる必要があると考えているはずだ。

ソフトバンクは、あくまで孫社長を中心に独自路線で、それぞれの大きな事業を主体となって投資・プロデュース・育成・構築していく方式、KDDIは有能なプレイヤーと組んでいく方式(事実米Netflixとの提携は上手くいっているようだ)となるようだ。

ドコモは単なる値下げ戦略メインとなってしまうのか。いや他にも隠し玉があるのではないか。ドコモの事業展開もここしばらく注意深く見ていきたいと思う。

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