2019年5月9日 更新

桜美林大学と産学連携!「第2回ディスプレイ研修合宿」レポート3

2回目の桜美林大学の生徒さんとの「ディスプレイ研修」。実際に試作が出来上がり、生徒さん達に見て頂きました。自分達がデザインしたものが実際にどんな出来上がりになるのか?レポートの最終回です。

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2月頭に講習とオリエンテーションを行い、店頭リサーチを経て、2月末にボンビ本社にて2泊3日の研修を行った桜美林大学、デザイン学科の5名でした。
4月26日(金)という大型連休のGWの前日に大学に行き、学生さん達が考えたディスプレイ什器の試作を披露し、最終講義とさせて頂きました。
今回はそのレポート模様を記します。
今回は江原道様の、
「限定クリーミーリップスティック」1色
「リップスティック」4色
「リップグロス」4色
のテスター陳列什器を課題としています。

どのような試作が出来上がったのでしょうか。

自分達が実際にデザインしたものの具現化

梱包

向坂先生の講習は、第一線で動かれていたビジネスマンであったこともあり、実務経験に基づいています。
試作は段ボールケースに入って輸送されるのですが、梱包に関しても言及をされます。
特に樹脂ものは割れやすいため、梱包が非常に重要です。
しかも、荷を扱う人(物流会社)の荷扱いの仕方にも触れて、「だから梱包が重要」ということをしっかりと教えられます。
ですから、学生さん達は、段ボールケースの開梱を自ら行い、ケースの中がどのような構造になっているのかをしっかりと確認していきます。
緩衝用のエアキャップ、そして緩衝用のパット、什器を取り出す時に落とさないような段ボールシートの折り畳み工夫、さらには中で色々なパーツが動かないようなテープでの固定などを確かめながらの開梱となりました。
開梱

開梱

開梱

開梱

A班 試作写真

A班のディスプレイを紹介します。

店頭リサーチの結果、売り手の視点設計では、機能性価値の主張の弱さを感じたようでした。
競合商品と比べて、どういう点を推していけばという考察の結果、買い手の視点設計で、「女優が作ったブランド」というリマインド力を店頭で高めればどうかと思考しています。
現状の売り場もそうはされていると思いますが、情緒性価値になり得るキーメッセージとして、ブランドポリシーを主張するという方向性を考えています。

よって、キーメッセージとして、
「女性は、自らの人生の主演女優である」「肌も唇も綺麗に」というwhat to sayを創り、how to sayに繋げています。
これは江原道様の目玉商品であるファンデーションなどと合わせたイメージを作る「肌も唇も綺麗に」という考えを元にしているそうですが、勉強熱心さが伺えます。

このキーメッセージと、ブランドの世界観を崩さないように、ブランドカラーと色をあわせた
『レッドカーペット』を思わせる赤いアクリル板の使い方や立体感などが秀逸です。
また、縦長の鏡を中心に配置をし、「肌も唇も美しく」の通り唇と同時にベースメイクも確認することが可能であり、競合商品の小さな鏡と差別化を図っています。
A班制作ディスプレイ

A班制作ディスプレイ

せっかくの研修ですので、学生さん達には楽しんで頂きたかったので、キーメッセージをクリエイティブ化する世界観にあうキャラクター選定も考えてもらいました。
肌に悩んでいた有名な女優さんを起用することで、肌にも優しいということを鑑みて考えている点も競合他社に比べて、機能性価値の伝達力を、情緒性価値の伝達でカバーしようという熟慮が伺えます。
A班制作ディスプレイ

A班制作ディスプレイ

< 評価 >
店頭販促物の制作には、コピーや訴求の入れ方だけではなく、素材を活かした見せ方や、形状デザインでの表現の仕方が重要になります。
斜めにしてそれぞれの商品がまるで「レッドカーペット」上の女優にように陳列される点は良いアイデアだと思います。この部分は、試作の打合せ時に『起毛素材にしようか』などの話も出ていましたが、最終的にアクリルに決めて作成した結果、アクリルの光沢感により非常に良い仕上がりになったと思います。
また、キーメッセージを受けたデザインのトーン&マナーや、元々のブランドの世界観を鑑みた斜め部分のレッドカーペットに商品が陳列をされている表現は、
「店頭リサーチからの考察」 → 「考察からのキーメッセージと方向性の決定」 → 「キーメッセージからの表現とアイデア」という意味で一気通貫していると思います。

課題点としましては、店頭に設置される状況への考慮が必要だったように思います。
文字の入れ方は、店頭では視認性が悪いと思われます。リーフレットなどの編集物を同時に置くことも重要ですが、あまり文字級数が小さいとほぼ読まれません。
また、側面の三角形の板が什器の最頂部まであるため、横からの視認性に欠けると思います。
最後に、せっかく考慮とアイデアを駆使した女優ミラーが、置かれる位置によっては人の顔位置に来ない場合があるので、この鏡を覗き込めない場所が多いのではないかと思います。
演出としてならもちろん良いのですが、鏡を見てもらうということは難しいでしょう。

課題点は抽出していますが、
一連の考え方として一気通貫したストーリーの中で、アイデアを駆使して、見せ方と見え方を考え、伝えるべきことをしっかりとクリエイティブアイデアを駆使して伝えようとしている点が驚きでした。

B班 試作写真

B班のディスプレイを紹介します。

こちらも店頭リサーチを行い、競合商品とこの商品の売り手の視点設計、買い手の視点設計を考察した上で、限定商品に着目をしています。
限定商品を際立たせることで、アテンション力を高めリップ商品シリーズへと繋ぐ意図です。

この限定商品が「The Eternal」をテーマに、太陽の煌めき、砂漠や大地の色彩、時を超えて魅了し続ける力強い美意識を昇華させたKoh Gen Do Holiday Collectionから登場しているため、その世界観を踏襲してデザイン設計を考えています。

「ずっと」「長く」「続く」「強く」からのキーメッセージを考え、
「The Eternal エターナルに強く美しい唇へ。」というコピーで全体のトーンと世界観を演出しています。
B班制作ディスプレイ

B班制作ディスプレイ

形状デザインのダイナミックな表現として、ダイヤモンド型のサインが浮いている演出がしてあります。これはKoh Gen Do Holiday Collectionのキービジュアルのピラミッドをモチーフに考えられています。

ターゲットのインサイトを深堀りして考えた結果、次のような発想に致った模様です。
商品を選んで使用している女性の年齢は主に30代から40代で、働きながら立派に子育てをされている方も多いでしょう。
仕事のことも家族のことも考えながら生活するのは大変なことで、自分が強く生きなければと思う女性は沢山いると思います。外見も「強いイメージ」に思われることも多いとは思うのですが、実際には「強い」と思われることに少し嫌な気持ちを持っていたりもしていると思います。
「そんなに強くないし、私もできないこともあるよ」という気持ちは隠して、自分の弱いところを出さずに頑張って強く生きています。
そんな気持ちを例えるのに、ピラミッドを重ねて、ダイヤモンド型にして強さと清浄無垢さを表現しました。
B班制作ディスプレイ

B班制作ディスプレイ

限定商品のリップをこのダイヤモンドサインに陳列して、ダイヤモンドのような商品を贈るという意味を込めています。
<評価>
限定商品を際立たせて他のラインナップに繋ぐという着目点は非常に良いと思います。
奇抜なサイン形状も、アテンション力が非常にあると思います。
こちらも情緒的価値を前面に出して多くを語らず、世界観とトーンでの発信をしています。

課題点としましては、こちらも店頭に置かれるシチュエーションが考えられていない点にあります。スペースのある平台に置かれるのであればよいのですが、横に他商品が並ぶと、陳列しているテスターは取れませんし、訴求内容も見えません。
どんな商品なんだろうということが分からなければ、他商品との比較もできません。      
セルフ販売という売場で、販売を補助する販促什器という部分ではアテンション力とリマインド力に偏ったツールと言えるでしょう。
限定品をどう扱うのか、という少し意地悪な課題でもあったのですが、テスター陳列台という部分のみで見ると、単体としてはデパートコスメなどのサインとしては非常によいのですが、
店頭リサーチを経て、売り手の視点設計、買い手の視点設計を経て設計するという今回のワークショップのテーマのアウトプットという点では少し辛口になってしまいます。
しかし、奇抜な発想はデザインの醍醐味ですし、良い発想だと思います。

具現化の確認

合宿に参加されなかった学生さん達も見学に来られ、
色々な先生も参加されて意見交換などもさせて頂きました。
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奇抜な発想な分、研修合宿時の試作の打合せが重要なのですが、さすが、具現化のプロであるボンビです。難題を具現化させる素材選定・図面の制作を行い、実際に美しい形にします。

製造前にどのような設計図を作って仕様の指示をしていくのかを含めて図面を見せながら、ボンビデザイナーからレクチャーをさせて頂きました。
あくまで一点ものなので、これが量産を考慮しているかは別ですが、その商業的な部分の話も最終講義では言及を致しました。

やはり、作品ではなく、セルフ売場で販売を促進する店頭販促物であるという認識の下、問題提起を行う「アート」ではなく、課題解決を行う「デザイン」をこの研修で学んで頂きたいですし、その中でデザインすることの楽しさを感じて頂ければ有意義な研修であったと思います。

授与式

最後に修了証をボンビのデザイナーから渡させて頂き、記念写真を撮らせて頂きました。
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引き続き、ボンビの力でできる人材育成と前向きな姿勢を発信していこうと思います。

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