2024年8月2日 更新

ロサンゼルス店頭レポート シリーズ1回目 vol.1

凡美社が独自に行っているアメリカ店頭レポート。ニューヨークからロサンゼルスへと場所を移してシリーズ化します。店舗の様相は、ニューヨークとロサンゼルスでは違った色を見せています。

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Los Angels

You can’t live without a car in Los Angels.
「ロサンゼルスでは、車なしでは生活できない」

これは、ジョークでも誇張でもなく
純然たる事実だ。

車での移動を前提に作られた街は、広大な土地に商業施設が点在しており、車で10分の距離も、フリーウェイ(無料高速道路)を使う前提の10分であるため、自転車では40分もかかる、ということがザラにある。

都心部では地下鉄やバスは運行しているものの、治安が悪く、遅延や運行中止が多発するため信頼できない。

反面、各施設は広い駐車場を備えており、
中心街でもない限り、駐車に困ることはそうそうない。
圧倒的車社会、それがロサンゼルスだ。
 (9641)

当然、そのような地域においては店頭も、車での来訪を前提に設計されている。

・広大な店舗。
・背が高い棚。
・広く取られた棚の間の通路スペース。

その中を大型のカートを押し、大型パッケージの商品を大量買いするのが、ロサンゼルスにおける典型的な買い物のスタイルである。

ゆえに、同じスーパーマーケットチェーンでも、ニューヨークシティとロサンゼルスの店頭はその様子が異なる。

西海岸に場所を移しての観察レポート第一弾となる今号は、ニューヨークシティとの違いを比較しつつ、ロサンゼルスにおける店頭の特徴に言及し、そこから共通して店頭に求められることは何かを洞察する。
 (9643)

観察エリア ロサンゼルス-バーバンク

観察エリア “ロサンゼルス-バーバンク”

バーバンクは、ロサンゼルス郊外に位置し、
ファミリー層に人気のエリアである。

安全で静かな住宅街が広がっており、公園やレクリエーション施設も充実。教育水準の高い学校が多く、子育て環境が整っている。


さらに、ハリウッドの影響を受けて映画産業が盛んであり、スタジオツアーなどのエンターテイメントも楽しめる点が魅力でもある。

交通アクセスも良く、都会の喧騒から離れつつも便利な生活が送れるエリアだといえる。
 (9646)

BEST BUY

ベスト・バイ(Best Buy)は、アメリカミネソタ州ミネアポリスに本社を置く世界最大の家電量販店。アメリカの雑誌フォーチュンのフォーチュン100にも選ばれている。
日本では、ケーズホールディングスと提携し、同社のプライベートブランドの販売が中心である。
同じ小売チェーンでも店舗の広さに大きな違い

同じ小売チェーンでも店舗の広さに大きな違い

ハイエンドの商品を体験するコーナーが存在

ハイエンドの商品を体験するコーナーが存在

空間を贅沢に使い訴求

空間を贅沢に使い訴求

ディスプレイ品と在庫が共存、ショーケース兼倉庫

ディスプレイ品と在庫が共存、ショーケース兼倉庫

WHOLE FOODS

ウォールフーズ・マーケットは、アメリカ合衆国のグロサリー・ストアチェーンである。
アメリカ合衆国を中心に、カナダとイギリスを含めて、合計270店舗以上を展開している。
グルメ・フード、自然食品、オーガニック・フード、ベジタリアン・フード、輸入食品、
各種ワイン、ユニークな冷凍食品も品揃えし、いわゆる「グルメ・スーパーマーケット」と呼ばれる比較的高級志向の食料品小売店に分類されている。
車で訪れカートで動き回るのが基本の広い通路

車で訪れカートで動き回るのが基本の広い通路

公共交通機関で来訪し、手持ちのカゴで買い物をするニューヨーク

公共交通機関で来訪し、手持ちのカゴで買い物をするニューヨーク

広い地下駐車場が当たり前にある

広い地下駐車場が当たり前にある

EV車の充電スタンドは広告メディアとしても活用

EV車の充電スタンドは広告メディアとしても活用

TARGET

ターゲット・コーポレーション(Target Corporation)は、アメリカ合衆国で売上高第5位の小売業者だ。
ディスカウント百貨店チェーン「ターゲット(Target)」など、小売店1800店強を運営している。
西海岸のターゲットは広い駐車場があることが当たり前

西海岸のターゲットは広い駐車場があることが当たり前

大型のカートで悠々通れる通路

大型のカートで悠々通れる通路

BOPISも買い物の選択肢として定着

BOPISも買い物の選択肢として定着

セルフレジより有人レジの比率が高い。(顧客との関係強化...

セルフレジより有人レジの比率が高い。(顧客との関係強化、顧客サポートの充実。地元民の雇用確保) 効率よりものんびりと買い物体験をする顧客が多い

売り場は整然としているが賑わいはあまりない。 ターゲッ...

売り場は整然としているが賑わいはあまりない。 ターゲットにわざわざ行く意味を作り出せていない

Ralphs

アメリカのスーパーマーケットチェーンである。1873年にジョージ・アルバート・ラルフによってカリフォルニア州ロサンゼルスで創業された。現在はクローガーの子会社として、カリフォルニア全土に多くの店舗を展開している。新鮮な食材、日用品、オーガニック製品など、幅広い商品を取り揃え、地域社会に根ざしたサービスを提供している。特に、顧客満足度の向上を目指した充実したカスタマーサービスが特徴である。
エンドキャップが充実するRalphsの店頭

西海岸の代表的スーパーマーケットRalphsの店内。
広い通路は、少々ものを置いても、ゆったりと通行可能なため、エンドが効果を発揮している。
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置いても邪魔にならない広さがあるからこそ、エンドが際立つ

置いても邪魔にならない広さがあるからこそ、エンドが際立つ

アイランドも各所に配置

アイランドも各所に配置

エンドキャップ+ショルダーキャップでスペース活用

エンドキャップ+ショルダーキャップでスペース活用

ファミリー向け+まとめ買い前提のため、パッケージは大型

ファミリー向け+まとめ買い前提のため、パッケージは大型

サラダキットの上に、サラダにまぶすナッツ類を配置 使用...

サラダキットの上に、サラダにまぶすナッツ類を配置 使用シーンに合わせたクロスMD

BOPISにも対応

BOPISにも対応

ウォルマート

アメリカ合衆国に本社を置く世界最大の小売チェーンである。1962年にサム・ウォルトンによってアーカンソー州ベントンビルで設立された。現在、ウォルマートはグローバルに展開し、食料品、衣料品、電化製品、家庭用品など多岐にわたる商品を提供している。低価格戦略を中心に、幅広い商品を一か所で購入できる利便性が特徴である。また、オンラインショッピングの強化にも注力し、eコマース分野でも成長を続けている。
車での来訪前提の品揃えをするウォルマート。

入り口には、炭火用のバーベキューコンロが高く積まれている。車に積んで持ち帰る、車に積んでバーベキュー場に持って行く、自宅の庭でバーベキューをする、など、車社会ならではの入り口ディスプレイといえる。
 (9678)

パレットに積まれた商品も大型の箱

パレットに積まれた商品も大型の箱

箱入りの商品も、大量に積むとディスプレイになる

箱入りの商品も、大量に積むとディスプレイになる

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“年収2万ドルの世帯に4万ドルの暮らしをさせる” そのためのEveryday Low Price

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生鮮食品も豊富。あらゆる商品を揃えながら、脇役のジャンルがない

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E-commerceにも注力。クリック&コレクトというBOPISサービスにも対応

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配達やBOPISは、商品が揃うまでの待ち時間が発生する。 自ら買い物に来られる人は、それらは利用せず店内で商品を検索しながら探す

Trader Joe's

トレーダー・ジョーズは、ロサンゼルス郡を本拠とする、アメリカ合衆国のグロサリー・ストアチェーン(食料品スーパーマーケット)である。
日本人が付けた通称はトレジョだそうだ。
2015年には「生鮮食品店」形式の総合食料品店に数えられるようになる。
ニューヨークの店舗よりも、小規模なバーバンクのTrader Joe's。
ニューヨークでは、店内に長蛇の列ができるTrader Joe'sだが、バーバンクの店舗は随分と落ち着いている。

これは、周りの小売店と比較したポジションに起因する。
ニューヨーク市内における同店は、品質を担保しながら
低価格の商品を販売するお得なスーパーという位置付けだが、バーバンクにおいては周辺小売店の価格は、ニューヨークと比較して10〜20%程度安く、Trader Joe'sは特別安いというわけではなくなる。

そのため、バーバンクでのTrader Joe'sは、周辺小売と同様に大型の店舗を構えるのではなく、小さい店舗で「厳選された高品質な自社ブランドを扱う小売店」としての立ち位置を取っている。

同じチェーン店でも、周辺地域やライバル店のブランディング、その中で顧客に提供できる価値を見据えたポジションを
とって行くことの重要性が伺える。
 (9690)

大量のレジで人を捌くニューヨーク

大量のレジで人を捌くニューヨーク

落ち着いた規模感のレジ

落ち着いた規模感のレジ

常にメンテされる棚、手書きの値札、人を感じる店頭は共通

常にメンテされる棚、手書きの値札、人を感じる店頭は共通

広く取られた花の販売コーナー。家が広いため、飾る需要が多い

広く取られた花の販売コーナー。家が広いため、飾る需要が多い

まとめ

ニューヨーク(東海岸)とバーバンク(西海岸)。

地域の特性が反映させれた店頭は、
同じ小売チェーンの店舗であっても、売り場に大きな差が見られた。

それは車社会であるという大きな特徴とは別に
有人レジとセルフレジの比率の違いを取ってみても、
素早く効率的に買い物をしたい人が多いニューヨークシティと、
ゆったりと買い物を楽しみたい、困った時にすぐ“人”のサポートを受けたい
バーバンクの、買い物客の考え方の違いが反映されている。

誰のためのブランドか?
誰のための店頭なのか?

その答えは、もちろん顧客のためである。

“顧客第一“、その言葉に中身は伴っているだろうか。
なんとなくの記号と化していないだろうか。

地域ごとに、それぞれの“生活“をもつ顧客がいる。
なぜ、店頭に足を運ぶのか。彼らは何を、喜びとしているのか。
顧客の生活を想像し、彼らの喜びの半歩先をいく未来を売り場に反映させる。本当の意味での顧客第一の売り場作りが必要とされている。
了。

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