2025年4月14日 更新

LA 店頭レポート シリーズvol.4 ep.1 RALPHS

ロサンゼルスの店頭レポート第4弾。 コロナ化で進んだBOPIS。現状はコモディティ化している。トライ&エラーを繰り返すアメリカのリテール事情を「機能と体験」をテーマに考察していく。今回はRALPHS。

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LA 店頭レポート シリーズvol.4 ep.1 RALPHS

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はじめに

ドライブアップやBOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)といった非対面購買サービスは、いまや多くの小売店で標準的な機能となり、消費者はより手軽に、効率的に、欲しい商品を手に入れられるようになった。目的の品をスマートフォンで注文し、店舗の外で受け取る。
あるいは店内に足を踏み入れても、受取カウンターで数分以内に商品をピックアップして完結する。
その流れは、消費者の買い物スタイルを大きく変えつつある。

一方で、実際に店内を歩き、商品に触れ、売場の空気や接客を体感する——そうした「店頭での体験」も、依然として強い価値を持ち続けている。
オンラインでは得られない偶然の出会いや、五感を通じた気づき、店員との会話。機能としての“買う”を超えた、感情や記憶に残る購買体験が、そこにはある。

本レポートでは、ロサンゼルス・バーバンクにある主要小売店を対象に、各社が展開するドライブアップやBOPISの仕組みを実地に観察しつつ、それらの利便性と、同時に“店舗でしか得られない価値”についても深掘りする。
機能と体験——二つの接点が共存する今、私たちはどこに魅力を感じ、何を求めて店を訪れているのか。その実態を考察する。

ep.1 RALPHS

自社システムでドライブアップサービスを展開するRalphs

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事前にオンラインで注文を済ませ、駐車場の専用スポットに車を停めてアプリで通知すれば、スタッフが商品を車まで運んできてくれる——Ralphsは、そんなドライブアップサービスを通じて、日々の買い物に最大限の“利便性”を提供している。

しかし、それだけでは終わらない。
店内に一歩足を踏み入れれば、季節感あふれる華やかなディスプレイが次々と視界に飛び込んでくる。
きっちり計算された陳列は、目的の品を探す手助けになるだけでなく、買うつもりはなかったけれど「そういえばこれも必要だった」と、忘れていたニーズを思い出させてくれる。

とりあえず入ってみれば、自然と“揃ってしまう”安心感。深く考えずとも満足できる、そんな「考えなくていいラクさ」が、Ralphsの売場にはある。

テクノロジーが利便性を補完してくれる今だからこそ、店頭に求められるのは“提案力”なのだと実感する。
駐車場の一角がドライブアップ専用区画になっている。

駐車場の一角がドライブアップ専用区画になっている。

アプリを起動してQRを読むことで到着が通知される。

アプリを起動してQRを読むことで到着が通知される。

入り口から華やかなディスプレイが迎える店内。

入り口から華やかなディスプレイが迎える店内。

物が揃っている感じが、買い物のモチベーションを高める。

物が揃っている感じが、買い物のモチベーションを高める。

目を引くディスプレイは、そういえばこれ欲しいなと思い出...

目を引くディスプレイは、そういえばこれ欲しいなと思い出させてくれる。

多種のドリンクが並ぶことで、ドリンクを買うか否か、では...

多種のドリンクが並ぶことで、ドリンクを買うか否か、ではなく どのドリンクを買おうか、に思考がシフトする。

レジを抜けてから出口までの間にドライブアップ用の保管コ...

レジを抜けてから出口までの間にドライブアップ用の保管コンテナに ラッピングを施し、サービスのPRをする。

さいごに

各ブランドにおいて、細かな違いはあるものの、コロナ禍を経て発展したDrive UpやBOPISに関しては、いずれも一定の基準を満たす水準に達しており、現在ではサービス自体がコモディティ化していると言える。

そのような中でむしろ問われるのは、**“どこで買うか”ではなく、“誰から買うか”**という視点であり、店舗体験を通じてブランドの価値や世界観をいかに伝えるかが、競争優位性の鍵となっている。
つまり、デジタルサービスが横並びであるからこそ、売場にはブランドアイデンティティを体現する役割がより一層求められている。

「自社は何を大切にしているのか」「誰をもっとも大切な顧客と考えているのか」「どのような価値ある体験を提供したいのか」。こうした問いに対する明確な答えを持ち、社会に対して提案力のあるブランドとして存在感を発揮できなければ、単に利便性を追求しただけのデジタル施策では顧客の心をつなぎとめることは難しい。

また、顧客は常にデジタルかリアルか、どちらか一方に固定されているわけではない。
用途や気分によって、ある時はアプリでの注文を選び、ある時は店舗での買い物体験を楽しむ。
デジタルはリアルを代替する手段ではなく、あくまで選択肢のひとつにすぎない。

こうした状況下においては、どちらのチャネルを選択した場合でも、一貫した体験価値を提供できる全体最適なサービス設計が、より重要になってきている。

チャネルごとに施策がバラバラに展開されるのではなく、ブランドとしての統一された方向性のもとで、各チャネルが有機的に連動する仕組みづくりが、これからの時代の鍵を握るだろう。


了。

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