2019年10月23日 更新

食パン1枚ずつしか焼けない3万円のオーブンのマーケティング

食パン1枚ずつしか焼けない3万円のオーブンが売れている。そのマーケティングの背景を考え、高級家電一品物マーケットの今後を占ってみたい。

391 view

高級トースターの提供価値とは?

三菱電機の「ブレッドオーブン」が好調のようだ。
商品企画に携わった、マーケティング担当の八百幸さんへのインタビューが興味深い。
――まず聞きたいのは、やはり焼けるのが1枚だという点です。最初から「1枚だけ焼く」というコンセプトだったのでしょうか。

いいえ、実は開発検討の結果、1枚になったんです。それまでの弊社のトースターは、4枚同時に焼けることを訴求していましたから(笑)。朝はかなり忙しい時間ですし、一気にたくさん焼けるのがトースターの基本だと考えていました。

ただ、ブレッドオーブンは既存のトースターとは全く考え方を変え、「おいしさ最優先」で開発された製品なのです。当初は最低限「2枚焼き」という話もあったのですが、試作機をいろいろ作ってみたところ、1枚焼きに比べるとおいしくならないんですね。2枚で焼けるような形にすると、空間が大きくなってしまって、おいしく焼くことができないのです。おいしさを損なっても2枚焼きにするのか、最初のコンセプトを貫いておいしさを優先するのか、という選択になり、最終的においしさを選びました。
これまでは4枚同時に焼ける、朝の忙しい時間帯での効率を求めた商品だったとのこと。4人以上の家族を想定しそのような商品だったのだろう。

単身世帯が増加し、結婚していても子供がいないもしくは1人世帯が増えていることも踏まえ、効率より品質を提供するというマーケティングの考え方になったのかもしれない。

子供の数が2人以上でも、昨今の「イクメン」トレンドで、家事協力する夫が増えていることもあるのだろうか。オーブンの焼き時間は1枚3分だが、他のおかずの準備を妻がしているときに、夫や大きくなった子供が焼き番をしていれば、そう時間の無駄にもならないだろう。
高級トースターの走りはバルミューダ社の「ザ・トースター」だったのを記憶されている方もいるかもしれない。
当時数千円台が多かったトースター市場において、2万円という実売価格で2015年に発売された。このトースターも1枚もしくは2枚の食パンが焼けるというものだ。
食感がやみつきになるということで、大きく話題になった。
バルミューダが2015年に「ザ・トースター」を発売してから、“枯れた”と思われていたトースター業界が再び熱を帯びている。パナソニックや象印などの老舗だけでなく、急速に温まるアラジンの「グラファイトトースター」、シロカの「すばやき」などの新興メーカーも参入。シャープも過熱水蒸気調理だけで調理するコンパクトオーブン「ヘルシオグリエ」を売り出した。
ちなみにバルミューダという会社については、以下にまとめている。

高級家電一品物のマーケティング

高級家電のマーケティングはどのように考えられているのだろうか。
まとめ買いなどをサポートする家電量販店のコンシェルジュによると、「新生活家電を買う場合にまんべんなく予算を振り分けるのではなく、こだわりを持った配分で購入される方が増えました」と話す。

一人暮らしでも洗濯の時間が取れないからドラム式にする、自炊するから冷蔵庫だけは高機能な大容量モデルが欲しい、テレビはいらないから良質なオーディオが欲しい。その代わり、そのほかの家電は一番安いのでいい……、といった買い方をする人が増えているというのだ。

家にほとんどいない人なら、大画面テレビよりもスマートフォンやタブレットにお金をかけた方がいいし、逆に家で過ごす時間を大切にしたいのなら、自宅での生活をより快適にする家電を揃えたいと思うことだろう。最大公約数的な製品よりもコンセプトが明確化した製品が増えたことで、自分のライフスタイルに合わせて好きなものを選びやすくなったというわけだ。
こだわりの強い部分を高級家電にして、それ以外は安い製品を選ぶというトレンドが生まれてきているようだ。iPhoneなどもその最たるものかもしれない。
また、おひとり様世帯の増加も見逃せない。
おひとり様家電とは、一人暮らしの人などの生活を豊かにする、パーソナル向け家電のことだ。1人用やせいぜい2〜3人用の小型グリル鍋やミニ炉端焼き機、圧力鍋、ホットプレート、小型トースター、一人用炊飯器、ブレンダーなど、調理家電を中心にさまざまな製品がラインアップされている。
最大公約数的な機能よりも、話題になりやすい機能のほうが昨今SNS向けでは拡散しやすい。とはいえ、冒頭のブレッドオーブンなども4枚同時焼きを仮に提供するとなると、部材コストや開発コストが上がり、消費者への最終提供価格を上げざるを得なくなるのではないだろうか。

現在の状況を考えると
・できるだけ機能やユーザーメリットは先鋭化する。
・先鋭化させた場合、部材コストや開発コストが上がるため、1人向けもしくは2人向けなどの少人数向け製品にしてしまう。
・質さえ良ければSNSやネットで話題になる。
・話題になってしまえば、多人数世帯でも着目し、場合によっては無理をしてでも買う。

以上のような方程式や考え方が今後の高級家電市場の定番となっていくのではなかろうか。

関連する記事 こんな記事も人気です♪

コロナの影響を受けにくいビジネスとは?

コロナの影響を受けにくいビジネスとは?

コロナウイルスにより、事業環境も一変しています。コロナの影響を受けにくく、またはその影響下でむしろ伸びつつあるビジネス領域に注目しまとめてみました。
東急ハンズに見る店舗マーケティング

東急ハンズに見る店舗マーケティング

東急ハンズは、定番の「東急ハンズ」だけではなく、複数業態を展開しています。どんな業態があり、狙いはどこにあるのでしょうか?
ダイナミックプライシングが変える、これからのマーケティングとプロモーション

ダイナミックプライシングが変える、これからのマーケティングとプロモーション

今流行のダイナミックプライシングについて解説します。マーケティングの4Pでいうところのプライス(価格)を変動させ収益の最大化を図る仕組みですが、どのような事例があるのでしょうか。
消費者の深層心理を読み解くニューロマーケティング

消費者の深層心理を読み解くニューロマーケティング

2020年今までより注目を集めそうなニューロマーケティング。アンケートなどの申告型調査で集めるユーザーデータとどこが違うのでしょうか?また、それをどのように企業は商品企画に活かしていくのでしょうか?
企業研究:ワークマンの強みはどこにあるのか?

企業研究:ワークマンの強みはどこにあるのか?

ワークマンの株価の勢いが止まらない。その成功の秘密はどこにあるのだろうか。事業戦略から店舗戦略まで目につく特徴をまとめてみたい。
bonbi GOSSIP 編集部 | 1,069 view

この記事のキーワード

この記事のキュレーター

bonbi GOSSIP 編集部 bonbi GOSSIP 編集部
   
            スゴイコト