2023年9月26日 更新

ニューヨーク店頭レポートシリーズ 「BACK TO SCHOOL」

Retail Power in NYC vol.5。アメリカの新学期は夏休み明け。8月9月が日本でいう春休みの状況となり、新学期への買物シーズンとなる。当然そこには『セール』が成される。店頭はどのような展開をしているのかを考察する。

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夏が終わりに近づき秋の気配を感じ始める、8月下旬から9月上旬にかけて。

この季節の変わり目に、アメリカでは伝統的な2つのセールが存在する。

ひとつは「BACK TO SCHOOL」
新学期を迎える学生に向けて、学校生活を彩るアイテムを押し出す。

そしてもうひとつは「LABOR DAY SALE」
9月第1週の月曜日は「LABOR DAY」という祝日に設定されており、
この3連休を利用したセールが行われるのが一般的だ。

コロナパンデミックが去り、世界中からの旅行客でごったがえすニューヨーク。
観光都市としての姿を取り戻しつつあるニューヨークの小売現場において
この2つのセールはどのように展開されているのか。

店頭の今をリサーチし
その裏にある戦略について考察を行う。

BACK TO SCHOOL

Back to Schoolとは、夏休みが終わって学校に戻るという意味です。
ただ、日本で夏休み明けに学校に行くとは意味が違います。
アメリカでは、夏休み明けに学校に戻るという事は、学年が上がり、新しい学年で新しい担任の先生、クラスメートという意味です。つまり、夏休み明けに、学年度が始まるのです。
新学年が始まるという意味では、日本の4月と同じです。ただ、入学式というのはアメリカにはありません。子供だけが登校し、親は一緒に校舎に入って教室まで子供に付き添うということもしません。

<全て新しい物で新学年度を始める>
7月半ば、または8月に入るとBack to School Saleというセールを行うお店が多く出てきます。
アメリカでは、Back to Schoolということは、新学期が始まるので洋服や靴、バックバック、ランチボックスなど新しく買いに行くという意味もあります。
夏休みの間に子供の身長が伸びたため、去年の洋服が着れないというサイズ的な理由もありますが、新しいバックバックや衣類で新学期から学校に通わせるというのはアメリカでは普通のことです。Back to Schoolの買い物は、結構な金額になります。
そこで、消費税が無税となるTax Free Weekendを利用して買いに行く人も沢山います。
新学期が始まる1週間ほど前にほぼアメリカ全州で行われます。
BACK TO SCHOOLの調査のため
8月中旬〜9月初旬にかけて店頭観察を行った。

驚かされたのは、どの店頭においても
「BACK TO SCHOOL」のセールが目立っていなかったことだ。

店全体で推していく空気感はまったく感じられなかった。

これはニューヨークの土地柄が影響していると考えられる。
ニューヨークは、居住する人種や年齢層も様々な上に、
海外からの旅行者も圧倒的に多い。

つまり、学生を家族に持たない人の割合が多く、
それゆえ、店頭をBACK TO SCHOOL向けにデコレーション・
改編することはかえって利用者にとってノイズになる可能性もある。

コスト×効果を計算した上で、
大々的なPRはやらない、という選択がなされているのだろう。

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では、ニューヨークはBACK TO SCHOOLを
完全に無視しているのかというとそうではない。

例えばベストバイ店頭では、
タブレットやパソコン用品のような、
学生と親和性の高い商品のコーナーには
QR付きのPOPが設置されていて、読み込むと
バックトゥスクールのセール品を特集した
ページに飛ぶことができる。

デジタルとの併用により、
必要な人には、必要な情報が、必要な分だけ届く
そんな売り場作りが進んでいることを実感した。

BEST BUY

ベスト・バイ(Best Buy)は、アメリカミネソタ州ミネアポリスに本社を置く世界最大の家電量販店。アメリカの雑誌フォーチュンのフォーチュン100にも選ばれている。
日本では、ケーズホールディングスと提携し、同社のプライベートブランドの販売が中心である。
 PC周辺アイテムの上にPOPを設置。

PC周辺アイテムの上にPOPを設置。

配信機材の上にも、POPがある。

配信機材の上にも、POPがある。

PRは控えめでも、ターゲットの学生はコーナーにやってき...

PRは控えめでも、ターゲットの学生はコーナーにやってきている。

メーカー独自のPOPが置いてある場合もある。

メーカー独自のPOPが置いてある場合もある。

TARGET

ターゲット・コーポレーション(Target Corporation)は、アメリカ合衆国で売上高第5位の小売業者だ。
ディスカウント百貨店チェーン「ターゲット(Target)」など、小売店1800店強を運営している。
TARGETにおいても、 既存の棚の上にPOPをつけた...

TARGETにおいても、 既存の棚の上にPOPをつけただけのシンプルなPR。

化粧品コーナーの棚にもPOP。 棚そのものには通常時と...

化粧品コーナーの棚にもPOP。 棚そのものには通常時と変化はない。

文房具のコーナーには、凝ったPOPを設置。

文房具のコーナーには、凝ったPOPを設置。

特売ページへのリンク付きPOPや教員へ向けた特売案内が...

特売ページへのリンク付きPOPや教員へ向けた特売案内が設置されている。

文房具は、レジ横スペースにまとまっている。

文房具は、レジ横スペースにまとまっている。

このレジ横スペースはハロウィンシーズンにはハロウィングッズが置かれるコーナー。

DUANE READE

デュアン・リードは、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスが所有する薬局、ドラッグストアチェーン。店舗は主にニューヨーク市に多く、人口密度の高いマンハッタン内最大手のドラッグストアだ。
最初の店舗があったデュアンストリートとリードストリートの2つの名前から「デュアン・リード」と名付けられている。

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスとは、アメリカ合衆国・イリノイ州・ディアフィールドに本社を置き、ドラッグストアの運営を中心に、健康サービス事業を展開する持株会社である。
DUANE READEでは、店の奥の棚に文房具を固めている。

DUANE READEでは、店の奥の棚に文房具を固めている。

LEVI'S

唯一PRに精力的だったのはLEVI'S路面に大きく打ち出している。
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店内入ってすぐのスペースにも特設コーナー。

店内入ってすぐのスペースにも特設コーナー。

いかに学生の需要が多いブランドかということが読み取れる。

OLD NAVY

OLD NAVYも店内パネルの一角でPR。

OLD NAVYも店内パネルの一角でPR。

ただし、このパネルのみ。キッズコーナーにやってきた人にしか見えない。

まとめ

「BACK TO SCHOOL」。

アメリカでは一般的とされるセールだが、
ニューヨークの店頭では意外なほどに押し出されていなかった。

ニューヨークは人件費や賃料の高さゆえに、淘汰の激しい街だ。
不要な施策や効果の薄い打ち手にコストをかける余裕がないため、
必要なものだけが残り、研ぎ澄まされていく。

顧客目線で考えれば、関係のないBACK TO SCHOOLの情報はノイズであり、
店頭に書いてあること自体が重要なのではない。

顧客に必要なことを感知して実行に移す。
その点においてニューヨークの小売は鋭敏な感覚と実行力を兼ね備えていると見る。

認知獲得・リマインドといったデジタルが得意な部分は
すぐにデジタルへとシフトし、店頭は必要最低限のセール仕様にするに留める。

そうして、印刷物の出力コストや店内のレイアウトを変更するための人件費といった
コストの削減につながり、他にリソースを集中できるようになるのだ。

「これはこういうものだ」「前からこうしている」といったルーティーンの考え方
に囚われない本質を思考する力は大いに見習う必要があるだろう。

了。

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