2023年10月2日 更新

ニューヨーク店頭レポートシリーズ 「LABOR DAY SALE」

Retail Power in NYC vol.5。アメリカで9月の第一月曜は「労働者の日」。この時期のセールは定番の行事。ニューヨークの店頭はこのセールにどのように反応しているのだろうか。

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夏が終わりに近づき秋の気配を感じ始める、8月下旬から9月上旬にかけて。

この季節の変わり目に、アメリカでは伝統的な2つのセールが存在する。

ひとつは「BACK TO SCHOOL」
新学期を迎える学生に向けて、学校生活を彩るアイテムを押し出す。

そしてもうひとつは「LABOR DAY SALE」
9月第1週の月曜日は「LABOR DAY」という祝日に設定されており、
この3連休を利用したセールが行われるのが一般的だ。

コロナパンデミックが去り、世界中からの旅行客でごったがえすニューヨーク。
観光都市としての姿を取り戻しつつあるニューヨークの小売現場において
この2つのセールはどのように展開されているのか。

店頭の今をリサーチし
その裏にある戦略について考察を行う。
Just a moment... (7623)

LABOR DAY SALE

LABOR DAY(レイバー・デー)とはアメリカ合衆国の祝日の1つで「労働者の日」として9月の第1月曜日に定められている国民の休日です。
アメリカは南北戦争前後から発展した産業革命の時期に当たり、労働条件にあまり配慮が行き届いてはいなかった時代にピーター・マクガイアというニューヨークの大工は、労働時間の短縮と賃金の引き上げを求めて何年もの間闘いました。
1872年に10万以上の労働者が参加したストライキは、その後の国内の労働条件と賃金のあり方に影響を及ぼしました。
やがて、何千人ものアメリカの労働者が組合に加盟し、1日8時間の労働時間とより安定した雇用保障を手に入れました。
1882年9月5日、労働組合の創始者であるピーター・マクガイアと労働者たちがアメリカの労働者をたたえるために、最初のニューヨークでパレード(レイバー・デー・パレード)が行われたのがその起源です。
1万人以上の労働者が行進し、その後は花火と食事でお祝いをしました。
レイバー・デーは、休養とパレードの日と見なされていることが多く、学校も行政も会社も、ほとんどがお休みになり、多くの人が休養とパレードで賑わいます。
ニューヨークではたくさんの労働者による、大がかりなパレードも行われるようです。
また、「夏の終わり」と認識される日でもあり、学校に通う子供がいる家庭にとっては、夏休み最後の旅行の機会、また、若者にとっては、新学年で学校に戻る前の最後のパーティーの機会がある週末でもあるので各地で夏の最後を楽しむ休日として様々なイベントが開催されます。
8月下旬になると、
様々な企業からレイバーデイセールの告知メールが届くようになる。

季節の変わり目に合わせて、
夏物をクリアランスする意味合いもあるセールであり、
BACK TO SCHOOLのようにターゲットが限られないことから
各企業、大体的にPRを行っている印象だった。

アプリのポップアップ通知が
スマホの画面を埋め尽くしにかかってきているような
熱量の高い期間だったというのが体感だ。
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それゆえ、9月4日のレイバーデイ当日。
店頭調査に赴いて驚いた。

店頭では「SALE」の表示はあるものの、
「LABOR DAY」というワードは見当たらなかったからだ。

このことは、
告知・集客のメインはデジタルであることを物語っている。

ほぼ全員がスマホを持ち、個人にアクセスすることが容易な時代。
シーズンセール毎に店頭に販促物を設置する
印刷コスト・人件費をデジタル施策に振る、もしくは、
シーズンに左右されないゼネラルに居心地のいい空間を
作る方にコストをかけているのだと感じる。

bloomingdale’s

1858年にニューヨークで創業したアメリカの高級百貨店チェーン。

多くのデザイナーブランドや高級ブランドを取り扱っており、特にファッションに敏感な消費者の支持を集めている。
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高級ブランドフロアはセールを強く打ち出していない。

高級ブランドフロアはセールを強く打ち出していない。

入り口のセールサインは、シーズン色が薄く 極端に言えば...

入り口のセールサインは、シーズン色が薄く 極端に言えば、他のセールでも使いまわせるデザイン。

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デジタルでは、
LABOR DAYと明記。
店内でセールを示すのは、商品棚の表示がメイン。

店内でセールを示すのは、商品棚の表示がメイン。

値札を見てもセール対象なのかどうかはわかりづらい。

値札を見てもセール対象なのかどうかはわかりづらい。

店内は買い物客で賑わう。

店内は買い物客で賑わう。

通年置かれるディスプレイに力が入っている印象。

GAP

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GAPアプリでは
LABOR DAY と書かれているが扱いは小さめ。
売り場にセール感はないが、割引は常に行われている印象。

売り場にセール感はないが、割引は常に行われている印象。

売り場にセール感はないが、割引は常に行われている印象。

売り場にセール感はないが、割引は常に行われている印象。

セールをアピールしているのは特定のラックのみ。

セールをアピールしているのは特定のラックのみ。

THE NORTH FACE

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ダイレクトメールやアプリのトップでもLABOR DAY SALEを伝えるNORTH FACE。
店頭ではLABOR DAYの文字はない。

店頭ではLABOR DAYの文字はない。

店頭ではLABOR DAYの文字はない。

店頭ではLABOR DAYの文字はない。

SEPHORA

ユニークかつ高品質。
そしてリーズナブルな化粧品・スキンケア用品が揃い
若い層から高齢層まで幅広い支持を集める。
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LABOR DAYの文字はないが9/4までの特売ということで
レイバーデイの期間に合わせたセールであることがわかる。
店内は通常と変わりない印象。

店内は通常と変わりない印象。

棚の上部や商品近くの赤丸POPでセール中なことがわかる。

棚の上部や商品近くの赤丸POPでセール中なことがわかる。

セールを示すPOP。

セールを示すPOP。

まとめ

「LABOR DAY SALE」

アメリカでは一般的とされるセールだが、
ニューヨークの店頭では意外なほどに押し出されていなかった。

ニューヨークは人件費や賃料の高さゆえに、淘汰の激しい街だ。
不要な施策や効果の薄い打ち手にコストをかける余裕がないため、
必要なものだけが残り、研ぎ澄まされていく。

顧客目線で考えれば、
LABOR DAYと店頭に書いてあること自体が重要なのではない。

顧客に必要なことを感知して実行に移す。
その点においてニューヨークの小売は鋭敏な感覚と実行力を兼ね備えていると見る。

認知獲得・リマインドといったデジタルが得意な部分は
すぐにデジタルへとシフトし、店頭は必要最低限のセール仕様にするに留める。

そうして、印刷物の出力コストや店内のレイアウトを変更するための人件費といった
コストの削減につながり、他にリソースを集中できるようになるのだ。

「これはこういうものだ」「前からこうしている」といったルーティーンの考え方
に囚われない本質を思考する力は大いに見習う必要があるだろう。


了。

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