2018年1月31日 更新

パラフィン紙のカバー

古本屋で購入した本を包んでいたパラフィン紙について。

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今回は2014年に弊社のサイトのブログに書いた文章を
加筆訂正したものです。

今年の春先にふらっと入った古本屋で写真家、
藤原新也の「たとえ明日世界が滅びようとも」が目に止まって購入し、
先日やっと読み終えた。
本のタイトルはドイツの神学者、作家のルターの言葉
「たとえ明日世界が滅びようと私は今日林檎の木を植える」から
引用したものである。
3.11に関する文章が多かったせいかもしれないが
今まで読んだ彼の本の中では最も濃厚な読後感だった。

短かめのエッセイが多い藤原氏の本は
時代に楔を打つような毎回興味深い内容なのだが、
読みやすいので今までは短期間に
一気に読んでしまうことが多く、しかし、
読み終わってみると
一体何を読んだのか記憶が曖昧になることがあった。

今回は2~3話読んではやめて時間をかけて読んでみた。
理由は今回の本の内容のせいもあるが、
購入した本が帯もそのままに
パラフィン紙のカバーで丁寧に包まれていたこともあった。

アマゾンで簡単に本が買えたり、
どっちが付録だかわからないような雑誌が反乱する時代に、
たかがパラフィン紙のカバーが妙にうれしく感じた。
アマゾンから送られてくる段ボールの梱包を解き
接着剤で雑に貼り付けられたビニールパックの本を
剥がす時に感じる寒々しさとは真逆な感じだ。

本屋が生き残るのは大変だとは思うが、
このパラフィン紙は僕にとったら
どんな販促物よりも効果があった。
その包み方の丁寧さに
その本屋の主人の本に対する、
あるいは著作者に対する敬意すら感じさせた。
本にカバーを付けるのは嫌いだが
今回はそのまま読み始めた。
そしてパラフィン紙が一気にではなく
ゆっくり読めと言ってるように感じた。
パラフィン紙を通して店主が
間接的に言っているような気がした。

アマゾンは確かに便利だが、
小さな古本屋でこんな風に本との出会いがあることと
店主の誠実さがうれしかった。

読み始めていく中で「痛みの記憶」という章で
めずらしく涙がこみ上げてきた。
藤原氏の中学時代の先生で、
気弱で地味で真面目な古沢先生の話だった。
ある日、ワルだった藤原氏は
試験中に堂々とカンニングをしているところを
古沢先生に見つかった。
先生は藤原少年をビンタした。
その時、古沢先生の目には涙が浮かんでいた。
生徒をビンタしたことがなかった
古沢先生の唯一のピンタを受けた藤原氏の痛みの記憶の話だった。

それから随分と時が経った同窓会の場で
同級生からその古沢先生が
既に亡くなっていたことを、
そして彼の本棚には藤原氏の本がずらっと
並んでいたいたということを聞く。

切なくも、心に沁みる話だった。
最近は教師が体罰をすると大騒ぎになるが
古沢先生のビンタは決して暴力ではない。

数年前、入学式で先生が自分の子供の入学式を理由に
勤務先の学校の入学式を欠席したという話を
何かで読んで飽きれたが、
どんな先生よりも古沢先生のような人こそ
「先生」であるとあらためて思った。
否、先生である以前にひとりのまっとうな人間であると。

そしてパラフィン紙のカバーと古沢先生がシンクロしたのだった。

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