2023年4月24日 更新

販促考察 ヲタ女のグッズに惹かれる購買欲から販促施策の儲けを考える。

推し活やヲタク心の購買欲から『今買うべき理由』を醸成するプロモーション施策。商品とは関係ないパワーコンテンツを利用して直接購買動機付けを行う販促手法です。このような販促手法において売上アップだけではない儲けはどこで生み出されるのでしょうか。

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販促施策によって生み出される儲けを考える。

販促施策には色々な側面があります。
販売を促進するので売上を上げるのは当然のことですが、
さて、販促施策は売上を上げるだけでいいのでしょうか?
製品とは関係ないキャラクターなどを利用して販促施策を打つ企業も多いですが、
版権料や肖像権料というのは安いものではありません。
どのように儲けを出しているのかを考察したいと思います。

ヲタ女のグッズに惹かれる購買欲

愛が続く限り止まらぬ推し活

皆様には“推し”はいるでしょうか?
アイドルや声優、マンガのキャラクターなど、『推し』は人それぞれです。
個人でこっそりやりたい人も居るでしょうが、『推し』をもっと色んな人に知ってほしい、好きになって欲しい、『推し』の助けになることがしたい。などなど。
そんな心のもと、行われているのが『推し活』です。今回は『推し活』の中でもグッズに惹かれるヲタ心とヲタ心を的確にくすぐってくる企業様のグッズ展開、販促グッズ展開を考えてみました。
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推しの為なら重複購入も辞さないヲタ心

グッズ展開はさまざまな方法で行われています。
グッズを購入するヲタクの気持ちは、1:推しに囲まれたい、2:色んな推しをみたい、3:推しへの課金で更に需要を広げたいなど、推しを思う気持ちを色々な人と共有したいといった気持ちが、購買欲につながっていると思います。
そんな気持ちにコミットしてくる企業様のグッズ展開は、季節やイベントを絡めた展開、別媒体とのコラボ展開、シリーズ展開など、様々な展開方法を取っています。
その度にありとあらゆる手で転がされるヲタク達…。
とはいえ全てのグッズ購入など土台無理な話なので、購入する時は厳選したものを購入します。

『推し活』の側面から見ると、多売を促しヲタクの推しへの愛をくすぐる企業努力が見えます。
購入特典による限定の推しグッズの展開などもそうです。
予約特典でしか手に入らない推しグッズや、まとめ購入をしないと手に入らない推しグッズなど、様々な展開で財布の紐を引っ張られます。
この時少しでもヲタク心に響く特典でないと、購入には繋がらないので、企業様の『推し』への解釈には並々ならぬ努力を感じます。
少しでも『推し』に囲まれた生活をしたい。少しでも『推し』に還元したい。そんな心に寄り添うのがグッズ展開だと思います。
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推しへの深い愛はオリジナルグッズ作成も促す。でも著作権侵害には注意して。

『推し』への愛が溢れてくると段々オリジナリティを出したいとか、購入した物よりも気軽に外に持ち出したい、といった気持ちが生まれてきます。私はアクリルキーホルダーや缶バッジなどを購入するのですが、外でつけたい気持ちはあるけれど傷がつくのが嫌なタイプなので、祭壇を作り飾って楽しむようにしています。
でも、このキャラクターを推してるんです!と声を大にして伝えたい!と言う気持ちから、自分で作れば良いという結論に達しました。
今はこういった気持ちを持て余すヲタクの皆様に向けて1点から注文ができるグッズ制作所が多数あります。
ただし、ご注意ください。ここで非常に重要なことがあります。
世の中には著作権と肖像権というものがあります。
これを無視して販売や配布、ネット上での画像アップなどを行うと著作権侵害や肖像権侵害となり、損害賠償請求の対象となります。

例えば、『推し』の画像を利用してオリジナルグッズを作ったとしても、家の中で飾ったり、家族に見せて楽しむ分にはいいですが、外で配布することで利益を得たり、販売することで利益を得たり、インターネット上に公開などをすると著作権法違反となります。
あくまで、私的利用の目的で範囲で楽しむ分には、キャラクターや有名人のオリジナルグッズを作っても違法には該当しません。
ご注意ください。

販促施策で儲かることとは?を考察

直接購買動機付け施策にたよるとマズい?

『推し活』を続ける人にとっては、自分の『推し』が何かしらの製品の販売促進に使われている場合、製品そのものの良し悪しの判断ではなく、『推し』の何かしらのアイテムをゲットできるからという購買理由が発生します。
製品を作っている側、売る側からすると、短期間で売上の山をつくるには良い手法だと思われます。

ただし、販促でキャラクターを利用する時に留意するべき点があります。
その販促施策で購入をした人の何割かは、本来売るべき製品の良し悪しとは関係なく購入に至っており、その製品には向き合っていないという点です。
施策自体も一時期の山をつくるための一過性の施策にしかすぎず、その場しのぎの施策であるということです。
その施策を辞めた時には、対象となる製品が売れないという谷をつくることにもなります。

ここが販促施策を考える際に難しいところです。
販促施策を提案する会社としては、一過性の施策を提案し、採用されることで、クライアントの売上が上がり、自社の売上を上げることができればいいのですが、今の時代、そういう視座では販促面からのプロモーションコンサルティングは成り立ちません。

クライアントの製品が中長期的に成長する支援をするという視座が大切です。
ですから、フローではなく、次につながるストックさせる施策を考える必要があります。
「商売の真髄」としてよく例に出されますが、近江商人の「三方良し」という言葉があります。
「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」です。
まず考えるのは、自分主体の、自分の売上を作れたかどうかです。そこで利益を得ることができるかどうかという「売り手良し」です。ここが無ければ商売の意味がありません。
次には、その商売で買い手であるお客さんが得をしているかどうかが重要です。
ここが抜けていると、次の施策に繋がりません。
ここで重要なことは、『お客さんが得をしている』ということはどういうことか?ということです。
色々な側面があります。
・お客さんの担当者の社内評価が上がった
・お客さんの製品の売上が上がった
・お客さんのSNSのフォロワーが増えた
・お客さんの製品のファンが増えた
などなどその時々の評価設定で様々な『お客さんの得』が生まれます。
しかし、どれも表層的なものに過ぎません。
では、お客さんが得するということは、どういうことなのでしょうか?

販売促進という前提で考える以上、
上記の得はそれぞれの場面での小得とすると、それが向かうべきゴールは、
言い換えると、「お客さんが金銭的に儲かる」ということを意味すると考えます。
『儲かる』と『売上が増える』は違います。
売上が増えたところで、売りをつくるための経費が大きければ、それは儲かりません。
下手をすると赤字になり、損をする可能性もあります。

ストックさせて儲かる施策が最上級かも

ペプシが展開したベタ付け施策の意図は?

先日、社内の勉強会について、こんなテーマをみんなで考えました。

「ペプシが展開したベタ付け施策の意図は?」

これが正解かどうかは分かりませんが、顧問の先生のファシリテートもあり下記の結論にいきつきました。もちろん、ポイントはペプシの販促でペプシ社が儲かったかどうかです。
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代表的なところでいくと、ペプシのキャップベタ付けはスニーカーシリーズやスターウォーズシリーズなどがありました。
スニーカーファンやスターウォーズファンのコレクター癖も相まって、大反響でした。
『推し活』の一環で購入する、ヲタク心をくすぐるものであったと思います。

ペプシの競合といえば、コカ・コーラです。
日本市場では地歩的にはコカ・コーラの方が上です。相対する競合はコカ・コーラのみと言っても
過言ではなく、この施策は対コカ・コーラ戦への施策でもあります。

このノベルティのベタ付けでペプシはおおいに売上を上げることができました。
勉強会のファーストのブレストではここまでは導かれましたが、
しかし、「売上を上げること」=「儲かること」ではないということで、
さらに深堀りをしました。

キャラクターの成型キャップの費用を鑑みると、金型と成型費用を含めて@50円ほどではないかという仮説が立ちます。景表法もありますので、小売り単価@150円の商品のベタ付け20%だと上限は@30円となります。@30円でおさまっていたのでしょうか。。。
さらに流通全体で問屋や小売が半分をもっていくと想定すると、小売り売価@150ほどのコーラ1本にかける施策費用を考えると利益が出なくなります。
これでは売上は上がりますが、ペプシ社は儲かりません。
どのような儲けを創る施策だったのでしょうか?

ヒントは春先にこの施策が打たれているということでした。

そこで導き出した考察は下記の通りです。
コーラという炭酸飲料が最需要期を迎えるのは夏時期です。
その前の春先にベタ付け施策を打つことで、売り場のフェイス数をコカ・コーラよりも取ることを促進して、その流れで夏時期も売場の面積をとることで、ベタ付けの施策を打たない時期に製品が売れて儲かるという仕組みでは?ということでした。

ファシリテーターの推察も方向は同じでした。
コンビニで想定すると、3:1のフェイス数の実際のPOS比較(売上比較)は9:1に
なることもあるそうです。
フェイス数というのは凄く重要で、売り場面積の確保というのは実際のPOSに多大な影響を与えます。
よって、ペプシはベタ付けキャップ施策をすることで、コカ・コーラとのフェイス数を3:2、もしくは1:1にもっていく商談をコンビニに仕掛けました。
フェイス数の増加とベタ付けキャップ(景品)がついていることで、相乗効果で売上が伸びます。
よって、コカ・コーラよりもPOSが上がります。
小売り側は、めちゃくちゃ売れているという事実を目の当たりにするので、フェイス数を
保持します。
春時期のこの事実を以て、夏時期にベタ付けをしない(販促予算を使わない)状況で、
フェイス数を確保しつつ春時期よりも売上は下がるものの、最需要期の夏にしっかりと売り上げを上げて利益を出すという儲け話の販促施策だという推察でした。

もちろん、これが正解かは分かりませんが、
クライアントが金銭的に儲かる施策(得をする)を考えるということは、売り場での動きを含めた、利益構造を生み出す施策を考えるということになります。
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お客さんが儲かるということ

売りの山をつくるための施策はもちろん必要ですが、
その後に谷ができないようにすることも重要です。

では、ずっと山をつくる施策を打ち続けないといけないということになりますが、
それでは利益が確保できず儲かりません。
もちろん戦略的に、認知をとるために、あるいはブランディングのために、儲けを考えずにリーチ取りや売り上げ確保につなげる施策は必要です。
しかし、売場の状況、POSデータが果たす役割、フェイス数を保つための考察などをすることにより谷を作らないやり方を見出せる可能性はあります。

販促面からのコンサルティングとは、お客さんの売上が上がる施策を提案することではなく、お客さんが儲かる施策を提案することにあると考えます。
ここがあって、はじめて3方良しの「売り手良し」「買い手良し」になります。
「世間良し」は施策の中に盛り込んでいくことで評価を取ることができます。
直接購買動機付け施策には、ヲタク心などをくすぐりながら『推し活』をうまく利用するようなものがありますが、
その裏には、その販促施策を行う「製品」に目を向ける仕掛けがあったり、
さらには、一過性ではない、フローではなくストックさせる施策が介在していたりするかも
しれません。
1つ1つの施策の目的や意図を考察することは、販促に携わる人間として非常に大切なことだと思います。

そのようなことに留意しながら、今後も『推し活』に励んでいこうと思います。

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bonbi GOSSIP 編集部 bonbi GOSSIP 編集部
   
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