2018年6月22日 更新

マクドナルドの復活とプロモーション

過去最悪の減益を経て、2013年に社長がサラ・カサノバ氏に交代、マクドナルドの業績はなぜ好転したのでしょうか?新メニューの投入と既存メニューの改善が復活のカギでした。それらのプロモーションも併せて振り返っていきます。

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マクドナルドの復活

新メニューが好調のようだ

新メニューが好調のようだ

グランシリーズが受けているらしい
マクドナルドの株価が好調だ。6月に入り、上場来最高値を記録している。

6日に発表した5月の月次売上高では既存店が前年同月比9.6%増となったようだ。新メニュー投入により、客数や客単価が順調に増えており、通期業績の上振れを期待して、株価も上がっている。

5年前の停滞期を考えると、信じられないような業績の好調ぶりだ。当時、日本のマクドナルドは前社長の原田泳幸社長時代、2013年の売上高は前年比▲11.6%と、上場以来「最大幅」の減収減益に落ち込んでいた。

2013年の8月にバトンを受け取り、新社長についたのがサラ・カサノバさんだ。

カサノバさんはマクドナルドカナダを振り出しに、ロシア、ウクライナ、日本、マレーシア、シンガポールなどグローバルにキャリアを積み、マーケティングの畑を中心に働いてきた。

2004年から2009年にかけては、日本でマーケティング本部長として「えびフィレオ」、「メガマック」、「クォーターパウンダー」のマーケティングを担当している。

日本法人では、初の外国人社長として意気揚々と改革を始めたカサノバさんだったが、ある事件が1年後に発生する。仕入先の中国工場で、「期限切れ」の鶏肉を使用していたことが発覚したのだ。いわゆる「チキン事件」である。

さらに追い打ちをかけるように、半年後の2015年1月、今度はポテトやナゲットに「異物」が混入していたことが、日本各地の店舗で相次いで明らかになった。海外出張先で連絡を受けたカサノバさんは謝罪会見に出られず、マスコミの大バッシングは頂点に達してしまう。

結局2015年1月の株価は2,451円まで下がった。日本株評価の高かった時期でもあり、極端な急落はしなかったのだが、他企業が軒並み株高の時期に耐え忍ばねばならなかった。

低迷を乗り越え、この6月一時株価は上場来最高値の6,030円をつけている。2倍以上のストレッチを見せている。2018年12月期第1四半期(1-3月)の売上高は前年比10%増と勢いを増している様子を感じ取れる。
好調の理由の一つとして、新メニューの人気ぶりがあげられるだろう。どのようなメニュー開発やプロモーションを行ったのだろうか。

マクドナルドの人気メニュー

グランシリーズ

約1年前の4月、惜しまれながらも販売終了となったヘビー級ハンバーガー「クォーターパウンダー」と入れ替わりで登場したのが、「グラン クラブハウス(税込490円)」「グラン ベーコンチーズ(税込390円)」「グラン てりやき(税込390円)」などのグランシリーズだ。
グランシリーズのバンズは、日本向けに独自開発したようだ。モチモチ感を出すためにトーストするのではなく、スチームするなどの工夫を取り入れている。

おてごろマック

2015年10月にスタートした「おてごろマック」は、9種類のアイテムを、3つの分かりやすい価格帯に刷新して提供している。
主役は新たに開発した単品200円のハンバーガー3種類で、150円のオプションではSポテトなどが追加でき、100円のオプションではドリンクなどが付けられる。安い価格帯となるため、ママ層や若い層にも人気が出た。

バリューセット

2015年5月から刷新され、新たに豊富な「選択肢」が増えることとなった。組み合わせは実に「1000通り」にもなる。

例えばサイドメニューがポテトだけだったのが、サラダやスイートコーン、チキンマックナゲットも選ぶことができるようになった。ドリンクも、野菜ジュースや牛乳、お茶などまで、マクドナルドで取り扱っている全てのドリンクにまで拡大され、選択の幅が広がった。

サラカサノバ社長曰く『顧客に「選択肢」と「手頃さ」の両方を与える。』との戦略だったようだ。

顧客目線の商品開発

社長が行ったのは、「ママズアイプロジェクト」。社長自ら、全国行脚し「母親たち」と話し、マクドナルドに何を求めているのか、延べ352名の母親にヒアリングを行ったようだ。また、アンケート調査も強化し、顧客ニーズを探った。

その結果、新メニュー開発や既存メニューの改善につながったのだ。

マクドナルドのプロモーション

認知経路としては、テレビCMによるプロモーションが中心となるが、クリエイティブへのこだわりの高さと、集中露出する傾向が特徴となる。

CMによるプロモーション

おてごろマック 200円でここまで美味い!

わかりやすいCMとなった。

マックの裏メニュー「イミグレーション」篇

期間限定の裏メニューも人気がある

怪盗ナゲッツ「辛さでK.O.」篇

サイドメニューのCMにも積極的だ
マクドナルドはもはやコンテンツでもあるので、ユーチューバーの体験動画も多い。

【辛さでKO注意】日本初の新マックナゲットに挑んでみた!【マクドナルド】

ユーチューバーの動画
また、その他のプロモーション施策としては、ポケモンGOとのコラボも見逃せないだろう。

ポケモンGOとマクドナルドのコラボ内容は、国内約2900店舗のうち、約400店舗がジムになり、約2500店舗がポケストップになるというものだ。マクドナルドに行くとポケモンの出現率が上がるプレスリースも配信された。このコラボレーション施策は来店誘因につながり、問題発生後の不振状態ににプラスの一撃を加えたといって過言ではない。
今や、Twitterなどで自然と拡散される状態になっている。
顧客に積極的にSNSで発信することを促した、SNSプロモーションの好例と言えるのではないか。
最後になるが、もともとブランドのあった企業とはいえ、2013年から立て直すのは容易ではなかっただろう。

社長の顧客への丁寧なヒアリングによる商品開発及び改善、それを丁寧に消費者に伝わるようにプロモーションするという、企業活動の基本を地道に行った結果といえる。

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