2023年5月24日 更新

アメリカ版のJPM AWARDS!「Shop! Market Place」レポート シリーズ第2回

製品を商品にして、お客様に売れるという状況をつくることがプロモーションコンサルティングになります。そこには、『商品が売れるストーリーづくり』と『ストーリーの展開』が重要になります。

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ストーリーの大切さ  

Just a moment... (6982)

プロモーションコンサルティングで重要なことは、
お客様の製品やサービスをしっかり商品化することにあります。
その商品化において、「製品が売れるストーリーの構築」が非常に大切になります。

このストーリーは誰に向けて語るストーリーなのか。
このストーリーは誰が主人公なのか。
前回の記事でもあるように、この製品は誰に愛してほしいのか。
この製品の何を愛されたいのか。

「ストーリーの構築」だけでなく、その「ストーリーの展開」が
プロモーションになります。どのような展開が最適解なのかも
非常に大切です。

今回、4月末にアメリカテキサス州で開催された「Shop! Market Place」では、
「Finding the Story Connection」というテーマで基調講演がありました。

なぜストーリー?

よくマーケティングの講義などでも出てきますが、
説得の父と呼ばれるアリストテレスの弁論術を引用して、ストーリーの大切さを説明します。

Just a moment... (6979)

アリストテレスは弁論術で、人を説得し動かすための要素として、
●信頼(エトス)
●論理(ロゴス)
●感情(パトス)
の3要素を挙げています。

これをマーケティングの側面で置き換えると、
●信頼=信用性、キャラクター
●論理=ロジック、理由
●感情=気持ち
となります。

セールスや販売促進においても、この3要素は非常に効果的です。

まずは、丁寧な言葉遣いや、実績、お客さんにストレスをかけない対応、お客さんの声に傾聴する姿勢などで信頼を得る必要があります。信頼を得ることで、お客様に寛容さが生まれますし、こちらの言葉の力が増します。
その上で、商品に興味関心を持っていただくために、お客様の感情を動かします。

この感情を動かすための強い武器が「ストーリー」です。
商品が開発されできるまでのストーリー、商品を購入したお客様さんの喜んでいるストーリー、商品を買った後に待っている豊かな世界のストーリーなどを伝えることで感情を動かします。

ここ近年は『共感』『共創』という言葉をプロモーション業界でもよく聞きますが、『感情』を重視しています。
アリストテレスは、話し手は相手が抱いている気持ちや感情を理解し共感するとともに、感情に訴えかけることが必要だとしています。
まさに、売り手側は、買い手側の気持ちや感情を理解し共感するとともに、感情に訴えかけることが大切です。

感情が動くということは、脳まで届かせる最も早い方法となります。

そして、商品を買うことの必要性や正当性を論理的、合理的に説明します。

セールスにおいて効果的な手法は2000年以上も前に語られ、継がれてきていることなんですね。
このように考えると、感情がなければ、信頼と論理は無関係とはいいませんが、何かしら距離ができているように感じます。
ですから、感情が信頼と論理を結びつけ、より説得と行動変容を起こすものとなります。
そして、『ストーリー』は感情を動かすアイデアを運ぶ最も最適な方法となります。
長々と前説してしまいましたが、
基調講演の模様を簡単に紹介します。
講演の要素の抜粋となりますのでご了承ください。

Finding the Story Connection

Joe Lanzisero氏 元ウォルトディズニー社 ...

Joe Lanzisero氏 元ウォルトディズニー社 Creative SVP

Joe氏はディズニーのアニメーターとしてキャリアをスタートし、Imagineering部門のトップにまで昇りつめた人物。ディズニーランドのミッキーのトゥーンタウン、トイ・ストーリーランド、ミスティックポイント、香港ディズニーランドのグリズリーガルチなど、9億ドル以上のプロジェクトにクリエイティブリードとして携わった経歴を持つ。
また、パーク内やディズニークルーズ船上での多数のクラシックなディズニーライド、ショー、アトラクションにも携わっている。

TEA賞を2度受賞、さらにはディズニアナファンクラブのディズニーレジェンド賞も受賞しており、テーマエンターテイメントの世界で真のセレブリティ。

今回は基調講演として、”Finding the Story Connection (ストーリーの大切さ)”を講演した。

講演内容

講演は主に下記の内容について言及されました。

● なぜストーリーは大切なもので、何がストーリーを良いものにするのか

● どの様にブランドの核となるエッセンスを見つけるのか

● ストーリーをデザインに適応する – 物語 vs 根底にある意味

● 素晴らしい経験の作成、及びデザイン

Pixarのストーリー作成の6ルール

ストーリーづくりに関して、冒頭で、ピクサーのストーリー作成の6つルールが紹介されました。
説明されると、「たしかに」と納得します。
途中、ゆったりする時間や間延びするような時間はありますが、
映画上映時間中、視聴者をくぎ付けにするためには、
起承転結より、序破急のようなストーリーづくりになっている感じがするのですが、
やはり、感情を捉えて、共感を得ようとするルールがあります。
1. 普遍的である
素晴らしいストーリーテリングとは、人間の習性を取り上げ、独自の方法で伝えること。

2. 明確な構成と目的を持っている
主人公に危機を与え、全て解決させた後に安息を与える。

3. 感情移入できるキャラクターをもつ
観客があなたを応援する様になる。

4. 深層心理にアピールする
人の感情を理解し、ストーリーと深層心理を結びつける。

5. 意外性があり、予測不可能なこと
典型的なおとぎ話の流れを覆す。

6. シンプルで焦点を絞っている
何が重要で何が副次的なものであるかの優劣がハッキリしている。

ストーリーピラミッド

 (6993)

ストーリーを構築する際の考え方を5段階に分けています。

・シンプルにする
・印象的にする
・注意を引く
・重要なアイディア
・ストーリー/基礎のテーマ

最上段に『シンプルにする』というのがきています。

重要なアイディア

 (6996)

目的が何かを明確にすることは最も重要です。

・伝えたい重要なアイディアやテーマを決める。

・ストーリーを読んだ後に持って帰ってもらいたいものは何か。

・目的に沿った構造を選ぶ。

印象的にする

 (6999)

『どのように』伝えるかという部分です。

・ストーリーに魅力的であると同時に情報性を持たせる。

・人間らしい要素を見つけ出す。

・意外性や予測不能な要素を入れる。

結びつける

 (7003)

最上級の深堀りする力が必要になります。

・人々が反応し、関連性を持ち、記憶に残る要素を考える。

・ストーリーに関連づけるための適切な感情を利用する。

・ストーリーを強化し、感情と結びつけるために人々が知っていることを利用し、そのムードを創り出す。

シンプルにする

 (7005)

シンプルにする作業が実は一番難しいことだったりします。

・考えているアイデアやデザインをまとめ、コアストーリーを強化する方法を確認し、感情との関連付けを行う。

・少ない方がいい(シンプルな方がいい)。

・デザインと経験の優劣をハッキリさせ、顧客がストーリーを聞いた時の経験(カスタマージャーニー)を考える。

ストーリーの種類

・物語 - 直接内容を伝える
映画、本、TVの様に、明確なキャラクターがあり、始まりと終わりがハッキリしている。

・根底にある意味 - デザインによって導く
物語を通じて、設計チームがデザインの方向性を決定し、テーマと一致させる。
実際に、手掛けられたディズニーのアトラクションテーマが紹介されました。
・重要なアイデア
・ストーリー
の紹介が成されました。

実績例:香港ディズニーランド トイストーリーパーク

 (7010)

・ストーリー
Andy(映画内の少年)はお気に入りのおもちゃを裏庭に置いている。

・重要なアイデア
訪問者がおもちゃのサイズになることでトイストーリの世界観を体験できる。

実績例:ディズニーランド(アメリカ) ミッキー トゥーンタウン

 (7013)

・ストーリー
ミッキーマウスと友達が住む町に訪問者を招待する。

・重要なアイデア
ゲストは3種類の世界をアニメの様に体験できる。

経験デザイン(エクスペリエンスデザイン)の5つの主要な原則

・テーマを設定する。

・印象を調和させ、ポジティブな手掛かりと一致させることで、
より良い体験を作り出す。

・ネガティブな手掛かりは排除する。

・思い出を入れる。

・五感を利用する。

実績例:Kvaroy Arctic社

 (7018)

・なぜストーリー?
ストーリーは経験と感情を結びつける。

・どの様にブランドの核となるエッセンスを見つけるのか
シンプルに。且つ人に焦点を当てる。

・Kvaroy Arctic社はサーモンを養殖しているが、 3代に渡って経営しているファミリー企業でもあり、商品の価値のみならず企業のバックグラウンドをアピールすることで差別化している。
<家族の農場で持続的に育てられる>

私たちの家族は、北極圏の故郷であるクヴァロイ島で 3 世代にわたってサーモンを養殖してきました。サーモンの切り身からサーモンのホットドッグまで、私たちは人々と地球の健康を増進しながら、最も美味しく持続可能な魚をお届けすることに全力を尽くしています。

さらに、世界中で食べられている魚介類の半分が養殖されていることをご存知ですか? 持続可能なサケ養殖を擁護するのに今ほど適した時期はありません。私たちは、イノベーション、パートナーシップ、そして今日行う正しいことが明日のすべての人のより良い生活を生み出すという信念を持って、何が可能であるかを世界に示す旅の途中にあります。

私たちはノルウェー出身のクヴァロイ北極です。私たちと一緒に業界を変革し、海を守り、世界に食料を供給しましょう。

まとめ

簡単ではありますが、基調講演の内容を記させていただきました。

冒頭のアリストテレスの三要素、感情を動かすストーリーづくりのコツ。
製品が商品として売れるストーリーづくりの参考になったでしょうか?
「言うは易し、やるは難し」。
『ストーリーづくり』と『ストーリー展開』の2つをしっかりと構築して
クライアント様の製品が売れる、支持されるご協力に邁進していきたいと思います。

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bonbi GOSSIP 編集部 bonbi GOSSIP 編集部
   
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