ニューヨーク店頭レポートシリーズ「店頭の余白」RETAIL POWER IN NYC第七回 THE HUGH の店頭洞察

ニューヨーク店頭レポート第三弾。「店頭の余白」を考察します。7回目はTHE HUGHの店頭洞察レポートです。

目次

NYCを一言で表現するならば”喧騒の街”である。

歩道で数瞬でも立ち止まれば悪態をつかれ、
クラクションの鳴り止まないラッシュ時の道路は、
車で2KM進むのに40分を要する。

世界でも有数の高額な賃料と人件費は、
カフェで簡単な食事をしても20ドル(約3000円)という
物価の高さとして消費者にも跳ね返ってくる。

何をするにも急かされる街。それがNYCだ。
その喧騒が一瞬やわらぐ場所がある。
小売の店頭だ。

例を挙げると、
5THアベニューのTHE NORTH FACEは、
表通りの喧騒とは打って変わって
空間が広く取られ、開放感がある。

セール時には入店制限をかけてまで、
店内空間のゆとりを保つことに重きが置かれる。

ニューヨークにおいて、展示可能な商品点数を
絞ることにも繋がり、販売効率から考えると
非効率ですらある”余白”のある空間作りが進んでいる。

欲しいものはネットで買うことができ、どのような
情報にもアクセスが可能といっても過言ではない現代。

この”余白”こそが、今の店舗に求められている機能
ではないだろうか。

今回は、店頭における”余白”の役割について考察する。

THE HUGH 店頭洞察

601 LEXINGTON AVE, NEW YORK, NY 10022

マンハッタンミッドタウン。
所狭しと並ぶビル群に囲まれたエリアにある
フードコート”THE HUGH”

高層ビルの中央吹き抜けを贅沢に使用し、
さらに地下を掘ってテーブルスペースを設置することで
高さを生み、突き抜けるような開放感を生んでいる。

ゆとりを持って並べられたテーブルは、
満席になったとしても強い圧迫感を感じさせない。

各所に点在するアート、豪華な装飾は、コンセプトから
余白を作ることに振り切ったという印象を受ける。

”ここに来ると、いい気分で過ごせる”

その信頼感が、ビジネスの打ち合わせや、語学サークル
といった各種コミュニティの集合場所として選ばれている
理由といえる。

空間に奥行きを生む、宙吊りの照明。

木が丸ごと飾られるのは高さのある空間ならでは。

設置されたアート作品1。

設置されたアート作品2。

設置されたアート作品3。

木曜の15:30頃でも人で賑わうスペース。

まとめ

NYCは刺激的な反面、
息が詰まるような圧迫感のある街でもある。

どこに行っても人や情報に溢れた街だからこそ
”余白”を取り入れた店舗が人々の支持を集めるのだろう。

必要なものはネットで買える現代。
しかし、人は豊かになりたくて買い物に出かける。

”豊か”とは単純に欲しいものを手に入れる
という物質的な面のみでなく
気持ちのいい体験ができる、
解放された気分を味わえるといった
精神的な豊かさも内包している。

それは検索では手に入らない、
空間を持つ店舗でしか得られないものだ。

情報の量や品揃えで、店舗はネットに勝ち得ない。
反面、情報過多の現代だからこそ

情報を削ぎ落とし、気分を軽くする
本当にいい情報だけに絞った”体験”をデザインし、提供すること。

それが現代における店舗の使命だと感じた。

了。