ニューヨーク店頭レポートシリーズ「店頭の余白」RETAIL POWER IN NYC第一回 ベストバイの店頭洞察

ニューヨーク店頭レポート第三弾。「店頭の余白」を考察します。1回目はベストバイの店頭洞察レポートです。

目次

NYCを一言で表現するならば”喧騒の街”である。

歩道で数瞬でも立ち止まれば悪態をつかれ、
クラクションの鳴り止まないラッシュ時の道路は、
車で2KM進むのに40分を要する。

世界でも有数の高額な賃料と人件費は、
カフェで簡単な食事をしても20ドル(約3000円)という
物価の高さとして消費者にも跳ね返ってくる。

何をするにも急かされる街。それがNYCだ。

その喧騒が一瞬やわらぐ場所がある。
小売の店頭だ。

例を挙げると、
5THアベニューのTHE NORTH FACEは、
表通りの喧騒とは打って変わって
空間が広く取られ、開放感がある。

セール時には入店制限をかけてまで、
店内空間のゆとりを保つことに重きが置かれる。

ニューヨークにおいて、展示可能な商品点数を
絞ることにも繋がり、販売効率から考えると
非効率ですらある”余白”のある空間作りが進んでいる。

欲しいものはネットで買うことができ、どのような
情報にもアクセスが可能といっても過言ではない現代。

この”余白”こそが、今の店舗に求められている機能
ではないだろうか。

今回は、店頭における”余白”の役割について考察する。

地下鉄

地下鉄広告は文字情報が多い。
移動中は目線を固定できるので、文字でもコミュニケーションできる。

店舗

反面、店舗では情報を削ぎ落とした開放感が重視される。

BEST BUY 店頭洞察

ベスト・バイ(Best Buy)は、アメリカミネソタ州ミネアポリスに本社を置く世界最大の家電量販店。アメリカの雑誌フォーチュンのフォーチュン100にも選ばれている。
日本では、ケーズホールディングスと提携し、同社のプライベートブランドの販売が中心である。

ホリデーシーズンの終わり頃から、
台の入れ替え準備が進んでいたBEST BUY。

店頭では、広くスペースをとった
プロモーション台が目立った。

それは、製品を陳列するというより
製品を体験することに特化した印象の商品棚だ。

イメージを喚起するビジュアル。
ゆったりと商品を触って体験できるスペースの確保。

陳列できる商品の数は減っているが、
逆にそれが展示されている商品の
存在感を際立たせている。

年末商戦では、所狭しと商品を並べることに特化して
いた棚も、現在は一点一点をじっくり見られる
ディスプレイへと変化している。

具体的に欲しい商品はネットで探すことのできる現代。

店頭でしか感じることのできない”体験”に重きを
おいた売り場作りを進めるBEST BUY。

一見贅沢に見えるこのスペースの使い方こそが
店舗ならではの価値を生かした空間づくりといえる。

イメージビジュアルの目立つ商品棚

電球のディスプレイすら洗練されている

見やすさと在庫の確保を両立した商品棚

まとめ 店舗の使命とは

NYCは刺激的な反面、
息が詰まるような圧迫感のある街でもある。

どこに行っても人や情報に溢れた街だからこそ
”余白”を取り入れた店舗が人々の支持を集めるのだろう。

必要なものはネットで買える現代。
しかし、人は豊かになりたくて買い物に出かける。

”豊か”とは単純に欲しいものを手に入れる
という物質的な面のみでなく
気持ちのいい体験ができる、
解放された気分を味わえるといった
精神的な豊かさも内包している。

それは検索では手に入らない、
空間を持つ店舗でしか得られないものだ。

情報の量や品揃えで、店舗はネットに勝ち得ない。
反面、情報過多の現代だからこそ

情報を削ぎ落とし、気分を軽くする
本当にいい情報だけに絞った”体験”をデザインし、提供すること。

それが現代における店舗の使命だと感じた。

了。