国内時価総額1位と2位の会社による「移動サービス連合」

トヨタとソフトバンクが共同出資の会社を設立し、「移動サービス連合」で共同事業を行う。世界の大手のライドシェアサービスの筆頭株主であるソフトバンクと、自動車メーカーでは世界1位であるトヨタとの連携、どんな未来が待っているのだろうか。

目次

国内時価総額1位と2位の会社の提携

トヨタがソフトバンクと移動サービス事業で提携

<この記事のポイント>
・提携を申し入れたのは意外にもトヨタのほう。
・トヨタは1月に移動サービス全般を手掛ける「モビリティカンパニー」に変わる予定。
・配車サービス大手では、トヨタが提携するウーバー、グラブ、中国の滴滴出行に加え、インドのオラ等の会社の筆頭株主はすべてソフトバンクグループになっている現状がある。
・共同出資する新会社は企業向けの配車サービスのほか、データ解析サービスなどを展開していく予定。

トヨタの国内販売の縮小と海外でのライドシェアサービスの成長

車を所有しない人が増えている。

トヨタは、国内販売店系列を統合し、全車種を全店で販売する発表をしたばかりだ。
「トヨタ店」で高級車のクラウン、「カローラ店」で大衆車と、系列によって販売車種を変える戦略は高度経済成長期~1990年あたりまでうまくはまった。
ピーク時の90年に250万台あったトヨタ単体の販売台数は、98年に200万台を既に割っていたからだ。2004年には「ビスタ店」を「ネッツ店」に統合したあたりから、もともと国内販売には難しさが出ていたのだろう。
その後も、好調な海外販売に支えられ、会社の売上や利益規模は拡大を続けていたものの、その肝心な海外でライドシェア(配車)サービスやカーシェアリングサービスが急拡大していくのを目の当たりにして、決断を急いだに違いない。
以前から、ライドシェア(配車サービス)大手との連携も考えていたのだろうが、孫社長の打ち手のほうが早かった。トヨタが提携するウーバー、グラブ、中国の滴滴出行に加え、インドのオラなどの配車サービス大手の筆頭株主はすべてソフトバンクグループになっていた。自社中心でやることと、ソフトバンクグループと連携で事業を起こすことを天秤にかけ、共同事業に舵を切ることにしたのだろう。
少し驚いたのはその出資比率だ。出資比率はソフトバンクが50.25%、トヨタが49.75%となり、トヨタは過半数を譲った形となる。トヨタの社長から持ち込んだ話とはいえ、さすがのビジネスマン孫社長と言えなくもない。日本一の売上の会社との共同事業化の出資交渉を対等以上にもっていくとは凄みを感じさせられる。

新会社の事業やマーケティング

<この記事のポイント>
・(乗り物のサービス化を意味する)MaaSの普及に向けグローバルなライドシェアとの連携が不可欠(トヨタ友山副社長)
・顧客に対して、主要なライドシェアカンパニーと新会社のソリューション、プラットフォームを提供する。(トヨタ友山副社長)
・自治体と我々自身が事業主体になることも考えている。ニーズによってビジネスモデルが変わる。(トヨタ友山副社長)
サービスの全貌はまだ見えないが、将来に向けた共同研究や事業開発をしながら、あるときは顧客向けソリューションやプラットフォームを提供し、またあるときは国や地域との連携によりサービス提供側にも回るようだ。AIや自動運転に特化したサービスとか限定的なソリューションやプラットフォームではない模様だ。

記者会見では、「米国や中国、欧州のハイテク産業の勢いを見ると、ソフトバンク単独でもトヨタ単独でも難しい(勝つのは難しい)」といった趣旨のソフトバンク宮川副社長のコメントもあった。

日本の1位と2位の会社の取り組みが、国外でもどのような形で展開・評価されるのか、大いに期待したい。