盛り上がるレモンサワーのマーケティング&プロモーション

日経トレンディと日経クロストレンドが発表した「2019年ヒット商品ベスト30」12位に、サントリー「こだわり酒場のレモンサワー」が選ばれた。簡単にレモンサワーを作れる「素」のヒットに続き、RTD缶が800万ケースの大ブレイク。居酒屋でも同一ブランドにして急拡大した。プロモーションの戦略とは?

目次

レモンサワー界隈での注目すべきマーケティング手法

ここ数年ブームが続くレモンサワー市場に、コロンブスの卵のような発想で現れたのが、2018年2月発売の「こだわり酒場のレモンサワーの素」だ。レモンサワーを作る場合、レモンシロップなどに焼酎を加えて炭酸水で割るのが通常だが、このリキュールなら炭酸水を注ぐだけでちょうどよい濃さのレモンサワーが作れる。これがまずは38万ケース超えとヒットの下地をつくった。
19年はこのブランドが急拡大。サントリーが取ったのは、角ハイボールで培った「三位一体」の戦略だった。家で作る従来品に加え、すぐ飲めるRTD「こだわり酒場のレモンサワー缶」と業務用コンクを発売。当初、缶の年間計画は210万ケースだったが、2度の上方修正を経て800万ケース計画へと成長した。従来の「素」の年間計画も、60万ケースへと上方修正。飲食店の取扱い計画も3万店から5万店へと拡大した。レモンサワー市場は19年、前年比2桁増で拡大しているが、「その50%程度をけん引」(サントリー)。たった1つの新ブランドが、好調市場をリードする代表選手へと躍り出た。

CMを始めとしたプロモーションも興味深い

こだわり酒場のレモンサワー『晩酌にはナイターと』篇 15秒 梅沢富美男 サントリー

梅沢富美男を起用したCMも注目されている。
他社も負けていない、コカコーラもこだわりのレモンサワーを発表している。

【檸檬堂】阿部寛「いよいよ全国開店」篇 15秒 LEMON-DOU

阿部寛のCMが印象的だ。
コカコーラの檸檬堂には、以下の4種類のレモンチューハイがあるとのこと。※()内の数字はアルコール度数

・檸檬堂 はちみつレモン(3%)
・檸檬堂 定番レモン(5%)
・檸檬堂 塩レモン(7%)
・檸檬堂 鬼レモン(9%)
サントリーの家で作る従来品、「こだわり酒場のレモンサワー缶」、業務用コンクの三位一体のマーケティング戦略に対して、コカコーラは、こだわりの味を4種類缶製品で用意するマーケティング戦略を取ったようだ。

企業の強みを活かしたマーケティングとプロモーション

サントリーは、酒類販売店などへの卸売営業ネットワーク、居酒屋などへの原材料販売網を活かし、三位一体戦略を採用。
コカコーラは、それらの営業ネットワークがサントリーほど強くないという自社の特性を考慮しつつ、サントリーが馴らした地場を利用して、缶製品に特化した製品供給とその消費者への提案の酒類を増やすという戦略を取ったと言える。

各々の企業の強みを活かしたマーケティング戦略と言えるのではないだろうか。

CMのキャスティングも印象的だ。梅沢富美男を据えて、全年代的にプロモーションを図ろうとしたサントリーに対し、30−50代の男女に人気の阿部寛を担いでCMキャラクターとしたコカ・コーラ。

粋な男女が飲むというプロモーションイメージを醸成していると言えるだろう。

レモンサワーは毎年伸びているジャンルなので、双方一定のポジションを築き上げる可能性も高いが、どちらが最終的に缶製品での覇権を得るのだろうか。
しばらく興味深く見守ってみたい。