TATERU株価急落に見る危機管理広報

ネガティブな記事や報道は、一瞬で同時多発的に起こるため、広報やIR担当も社内からの問い合わせやメディア記者の取材申し込み電話や聞き取り調査に忙殺されてしまうことが多い。しかしながら、優先して迅速に行わなければならないタスクがあるのではないだろうか。

目次

テレビでも話題のTATERUとは?

株式会社TATERUは、アパート経営プラットフォーム『TATERU』をWeb展開しており、全国の土地とアパートを経営したい個人をマッチングするサービスを展開している。

マッチング後は、行政手続きの支援や資金調達のための融資をサポートし、その後アパートの建築を請け負い、完成後はオーナーに代わり入居者を探すなどの管理運営業務を行っている会社だ。

直近1年では、1棟平均5200万円のアパート建築請負棟数は900超となっており、2017年12月期の売上高は約670億円、営業利益は約59億円と非常に高収益なビジネスモデルとなっている。

突然起きたテレビ報道

23万円の預金通帳残高を623万円に改ざんし、西京銀行からの融資が受けられるように不正に便宜を図ったとのこと。朝日新聞など新聞媒体も大きく取り上げた。
このニュース発生後、8月31日終値で1606円だった株価は、週明け月曜日以降3日連続のストップ安となり、9月6日の終値で533円とほんの数日で3分の1前後になってしまった。

危機管理広報の重要性

短期に株価が3分の1になってしまうというのは、ただごとではない。TATERUは新興企業とはいえ、東証一部の上場企業でもある。

年初に起きた不正融資案件

年初に発生した女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」の不正融資問題では、運営元のスマートデイズ社が、同様にスルガ銀行に対して融資申請書類の改ざんをしていた。
TATERUにとっての不運は、年初に持ち上がったこの事件の類似企業と投資家に見なされてしまったことだろう。「かぼちゃの馬車」運営のスマートデイズ社は、事件後破産に追い込まれたからだ。

しかし、TATERU社の足元の売上、利益、総資産などを見る限り、スマートデイズ社のようにすぐに経営不安となる要素が現状大きく発生しているわけではない。

株価急落の原因は危機管理広報

一番最初に報じた日本経済新聞の報道後に、行われたのはこのIRリリースだけだった。
リリースでは、融資資料改ざんの事実を認め、契約解除の手付金を払った事実を認めている。

だが、他にも取りうる手段はなかったのだろうか?考えてみたい。

危機管理広報の方法

このIRリリース以外に、少しでも事態を収束する方法はいくつか考えられたと思われる。

1.IRリリース時に社長や役員による記者会見を行う。
同じIT企業のDenaは、キュレーションサイト不正発覚時に速やかに社長および役員による説明および謝罪会見を行った。

2.IRリリース文書き方
「本日の一部報道について」では、報道された内容の真偽に関してのみ言及されていたが、それ以外の情報を伝える必要性もあったのではないかと思われる。

A.特別調査委員会の開設を表明
→特別調査委員会を外部の弁護士等で組織し、どのような調査、そして調査内容をいつ公表できそうかなどを表明する。

B.調査結果判明後、記者会見を行う意思の表明
→公開企業として調査して裏を取った後は、メディアの前に出ていく覚悟があるということを示すことで公明正大さが伝わる。

C.この件を受けて、役員の報酬を減額
→調査機関など、一定期間役員報酬を減額するなどの姿勢を示すことで、少なからず誠実な企業姿勢を表明することにつながる。
危機管理広報の方法はさまざまだが、危機発生時は、広報やIR担当も次々と出る報道対応やメディアからの問い合わせの電話に忙殺されてしまうことが多い。

しかしながら、危機と向き合いながら迅速に、会見ができれば会見を行う、すぐにできないのであれば、調査委員会の設置など可及的速やかに行うなど、誠実な企業姿勢を見せていくためのタスクを迅速に行うことが重要となる。
次回の記事では、昨今プロモーション担当者にとって大きな問題の一つであるプロモーション時のSNS炎上に関する危機管理方法について取り上げてみたい。