LA 店頭レポート シリーズvol.5 ep.6 Target
はじめに
かつて「欲しいものを買うために出かける」ことは、当たり前の消費行動だった。
目的の店舗に向かい、目的の商品を手に入れるという構造は、長らく人々の購買行動の中心にあり、特に郊外型ショッピングモールなどはその象徴的な存在であった。
しかし、ECサイトの進化とスマートフォンの普及により、消費行動は劇的に変化した。
欲しいものはいつでもどこでも検索・比較・購入ができ、効率的で機能的な購買手段が生活に完全に定着した今、「モノを手に入れる」ことそのものが、もはや購買動機にはなりづらくなっている。
こうした環境の中で、リアルな商業空間が再び注目を集めるには、新たな役割が求められるようになった。
そのひとつが、「セレンディピティ(serendipity)」の提供である。
セレンディピティとは、「偶然の幸福な発見」を意味する言葉であり、計画や期待を超えたところで、ふとした気づきや出会いに心を動かされるような体験を指す。
事前に調べ、比較し、最適解を選ぶことが当たり前になった現代において、人々は逆に“想定外の発見”に飢えている。
あえて検索せずに歩いてみる、予定になかったものに出会ってみる──そんな非効率で偶発的な行為が、かえって深い満足感や記憶に残る体験をもたらすようになっている。
このように、商業空間が果たすべき役割は、単に「買う場」から、「何かと出会う場」へと変化しつつある。
本レポートでは、こうした消費者心理の変化に注目しながら、「偶然性」が商業空間にもたらす価値について考察を進めていく。
目的の店舗に向かい、目的の商品を手に入れるという構造は、長らく人々の購買行動の中心にあり、特に郊外型ショッピングモールなどはその象徴的な存在であった。
しかし、ECサイトの進化とスマートフォンの普及により、消費行動は劇的に変化した。
欲しいものはいつでもどこでも検索・比較・購入ができ、効率的で機能的な購買手段が生活に完全に定着した今、「モノを手に入れる」ことそのものが、もはや購買動機にはなりづらくなっている。
こうした環境の中で、リアルな商業空間が再び注目を集めるには、新たな役割が求められるようになった。
そのひとつが、「セレンディピティ(serendipity)」の提供である。
セレンディピティとは、「偶然の幸福な発見」を意味する言葉であり、計画や期待を超えたところで、ふとした気づきや出会いに心を動かされるような体験を指す。
事前に調べ、比較し、最適解を選ぶことが当たり前になった現代において、人々は逆に“想定外の発見”に飢えている。
あえて検索せずに歩いてみる、予定になかったものに出会ってみる──そんな非効率で偶発的な行為が、かえって深い満足感や記憶に残る体験をもたらすようになっている。
このように、商業空間が果たすべき役割は、単に「買う場」から、「何かと出会う場」へと変化しつつある。
本レポートでは、こうした消費者心理の変化に注目しながら、「偶然性」が商業空間にもたらす価値について考察を進めていく。
セレンディピティとは、「偶然の幸福な発見」を意味する言葉であり、計画や期待を超えたところで、ふとした気づきや出会いに心を動かされるような体験を指す。
ep.6 Target
1ブランド、1ジャンルを強調するTargetの売り場
Targetの店頭で印象的だったのは、他店で多く見られるようなクロスマーチャンダイズの手法がほとんど見られなかった点である。
たとえば店頭に設置されたエンド棚では、ビーチアイテムであればビーチアイテム、おもちゃであればおもちゃ、といったように、ひとつのジャンルや特定のブランドで統一された陳列が多く見られた。
映画『ジュラシック・ワールド』の新作とタイアップした販促棚も展開されており、こうしたコラボキャンペーンや、自社のブランド訴求を強化したい企業にとっては、非常に相性の良い売り場構成といえる。
一方で、エンド棚に採用されたブランドやカテゴリに関心がない来店者にとっては、偶然の出会いの可能性が限定的になるという側面もある。
つまり、「思いがけない発見」が生まれる余地は比較的少なく、計画購買に特化した構造になっているともいえる。
とはいえ、統一感あるデザインPOPや明快な陳列によって、購買決定の「最後のひと押し」が売り場で自然に促されており、あらかじめある程度欲しいものが決まっている顧客にとっては、非常に快適な買い物体験が提供されている。
まさに「Target(ターゲット)」というブランド名が示すように、「狙ったものが手に入る」「ブレずに買いに来た目的を果たせる」ことが、この店舗の価値提案であり、それを売場構成やデザイン面で忠実に体現しているのが特徴である。
たとえば店頭に設置されたエンド棚では、ビーチアイテムであればビーチアイテム、おもちゃであればおもちゃ、といったように、ひとつのジャンルや特定のブランドで統一された陳列が多く見られた。
映画『ジュラシック・ワールド』の新作とタイアップした販促棚も展開されており、こうしたコラボキャンペーンや、自社のブランド訴求を強化したい企業にとっては、非常に相性の良い売り場構成といえる。
一方で、エンド棚に採用されたブランドやカテゴリに関心がない来店者にとっては、偶然の出会いの可能性が限定的になるという側面もある。
つまり、「思いがけない発見」が生まれる余地は比較的少なく、計画購買に特化した構造になっているともいえる。
とはいえ、統一感あるデザインPOPや明快な陳列によって、購買決定の「最後のひと押し」が売り場で自然に促されており、あらかじめある程度欲しいものが決まっている顧客にとっては、非常に快適な買い物体験が提供されている。
まさに「Target(ターゲット)」というブランド名が示すように、「狙ったものが手に入る」「ブレずに買いに来た目的を果たせる」ことが、この店舗の価値提案であり、それを売場構成やデザイン面で忠実に体現しているのが特徴である。
ひとつのブランドの存在感が際立つエンド。
商品ジャンルごとに整理された棚割り。
立体POPはユニークな形のものが多い。
ジャンルごとに整理されたエンド。
子ども服コーナーに近いエンドでは映画とタイアップ。 大枠のレイアウトでは、クロスマーチャンダイズも行われる。
同じジャンルで固めて、コーナー自体を際立たせる方針。
さいごに
ECやデジタルマーケティングの浸透により、現代の消費者は必要な情報や商品をスマートフォンひとつで手に入れられるようになった。
検索すれば欲しいものが瞬時に見つかり、比較し、購入する。
こうした便利さが日常化した今、リアルな店頭に足を運ぶ理由は変化している。
もはや「必要なものを買う場所」としての役割だけでは、来店動機にはならない。
そのような時代において、小売の現場が果たすべき新たな役割のひとつが、「偶然の出会い=セレンディピティ」の提供である。思いがけず出会った商品や空間に心を動かされ、「なんとなく気になって買ってしまった」「見ていたら欲しくなった」といった感情の揺らぎこそが、リアル店舗ならではの価値である。
しかし、ロサンゼルスの売場を観察して強く感じたのは、真に意味のあるセレンディピティは、単なる偶然では生まれないということだ。
それはむしろ、顧客理解に基づいた戦略的な売場設計、空間演出、提案の積み重ねによって導かれる“計算された偶然”である。
顧客がどのようなライフスタイルを送り、どんな場面で幸せを感じ、どのような提案に心を動かされるのか。さらには、自社がその中でどのような価値を提供できるのか。こうした問いに真摯に向き合い続けることでしか、偶然の出会いは生まれない。
そのためには、デジタルの力が不可欠である。オンライン上で取得できる行動データや関心トレンドは、顧客像を理解する上で大きな手がかりになる。
一方で、実際の店頭で顧客の視線や立ち止まり方、ちょっとした反応を読み取るといったアナログな観察こそが、データでは読みきれない「人らしさ」を捉えるうえで重要になる。
デジタルとアナログは、本来対立するものではない。それぞれに異なる強みがあり、どちらか一方では不完全である。両者を適切に組み合わせることで、はじめて「顧客のリアルな感情」に近づくことができる。
どちらが優れているかという視点ではなく、いかに両者を補完的に活用し、売場や体験に反映させていくか。そこに、これからの小売が向かうべき方向がある。
そしてそのすべては、最終的に「顧客の笑顔」というシンプルで本質的な目的に通じている。
売場のすべての工夫は、その一瞬の感情の揺れを生み出すためにあるのだ。
了。
検索すれば欲しいものが瞬時に見つかり、比較し、購入する。
こうした便利さが日常化した今、リアルな店頭に足を運ぶ理由は変化している。
もはや「必要なものを買う場所」としての役割だけでは、来店動機にはならない。
そのような時代において、小売の現場が果たすべき新たな役割のひとつが、「偶然の出会い=セレンディピティ」の提供である。思いがけず出会った商品や空間に心を動かされ、「なんとなく気になって買ってしまった」「見ていたら欲しくなった」といった感情の揺らぎこそが、リアル店舗ならではの価値である。
しかし、ロサンゼルスの売場を観察して強く感じたのは、真に意味のあるセレンディピティは、単なる偶然では生まれないということだ。
それはむしろ、顧客理解に基づいた戦略的な売場設計、空間演出、提案の積み重ねによって導かれる“計算された偶然”である。
顧客がどのようなライフスタイルを送り、どんな場面で幸せを感じ、どのような提案に心を動かされるのか。さらには、自社がその中でどのような価値を提供できるのか。こうした問いに真摯に向き合い続けることでしか、偶然の出会いは生まれない。
そのためには、デジタルの力が不可欠である。オンライン上で取得できる行動データや関心トレンドは、顧客像を理解する上で大きな手がかりになる。
一方で、実際の店頭で顧客の視線や立ち止まり方、ちょっとした反応を読み取るといったアナログな観察こそが、データでは読みきれない「人らしさ」を捉えるうえで重要になる。
デジタルとアナログは、本来対立するものではない。それぞれに異なる強みがあり、どちらか一方では不完全である。両者を適切に組み合わせることで、はじめて「顧客のリアルな感情」に近づくことができる。
どちらが優れているかという視点ではなく、いかに両者を補完的に活用し、売場や体験に反映させていくか。そこに、これからの小売が向かうべき方向がある。
そしてそのすべては、最終的に「顧客の笑顔」というシンプルで本質的な目的に通じている。
売場のすべての工夫は、その一瞬の感情の揺れを生み出すためにあるのだ。
了。
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企画づくり、現地調査、デザインと設計、製造と施工まで一気通貫して行います。
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