メニュー表はお店の顔

飲食店のメニュー表が好き、そして観察をし考察を行っているデザイナーの日記です。

目次

皆さんは飲食店を利用したときに「このお店は良いな!」と思う基準はありますか?
もちろん食事が美味しいかどうかというのは当たり前として、価格や接客、店の内装、清潔感など様々な評価要素があると思います。
最近ではスマホで決済するのが便利ということで決済方法なども評価要素になるでしょう。

私は『メニュー表がどうであるか』を評価要素にしており、「このお店は良いな!」と思う基準の一つにしています。
このように思う人は案外少ないようで、メニューがわからなくても店員に聞いたら良いし、食事にありつけたらOK という「単なる情報」と捉える人が多いのかもしれません。
けれども、メニュー表のレイアウトやデザインから知らず知らずのうちにお店の印象を決めていたりすることもあるのではないかと私は思っています。
私は、メニュー表はお店を印象付ける『顔』だと思います。

メニュー表のあるある

まずはメニュー表を手に取ったときの『あるある』を紹介します。

私の独断と偏見ですが、皆さんも一回は経験があるのではないでしょうか?

どっちが表?裏?

 席に案内され、いざメニュー表を手に取ったものの、オモテもウラも店名が入っているだけでどっちから読めばいいの?と思ったことはありませんか。

そこには日本語ならではの縦書き・横書きが関係していることがあります。
皆さんご存知の通り、縦書きなら右から左、横書きなら左から右に書きます。
なので表紙もそれに応じて縦書きなら右、横書きなら左がオモテとなる場合が多いようです。
しかし、必ずそうであるとは限りません。横書きでも右がオモテのこともあったりします。

とりあえず生で! でも、つぎ…どうする?

メニューは縦書きになっているから右がオモテだな!で、「まずは飲み物、のみもの、ノミモノ、、、。
あれ?どこに書いてあるんだ?」(探してる間に店員がくる)…と、とりあえず生で!そんな経験ありませんか?
飲み物って必ず最初に注文するのになぜかメニュー表の最後に書かれていることが多いんです
よね。
また、居酒屋はドリンクの注文が多いので料理とは別にしてメニュー表を出しているところも多
く、(全ページ見た後に別紙でしたー。)なんてこともあります。

ようやく注文するぞ! なにこれ読めない…

ドリンクメニュー見つかったし、ようやく安心して注文できるな…「えっなにこれ読めない!」
こだわりの強いお店では独特なフォントで書かれていたり漢字が多く長い料理名もあったりします。

えっ!すごい量!(・・・嬉しい)

1人前の料理なのに2人前あるんじゃないかと思うこともありますよね。
いや、ボリューミーなメニューは本当にありがたいですし、嬉しいです。
海外の飲食店では写真よりも量が少なくクオリティも写真と違うことが多いようで、日本
に来た外国人が「おもてなしの文化だ!」と感激するみたいです。
損した気分になるよりはいいのかもしれませんが、多いのも、たまに、ビックリする時があります

メニュー表は冒険の地図

ネガティブな側面、ポジティブな側面の両方からメニュー表のあるあるを出してみました。
思い当たるところがあるとは思うのですが、私たちはあるあるを感じるほどにメニュー表を見ているし、それだけ頼りにしているということです。
私はメニュー表で共感することが1つでもあると、訪れた店を思い出したりします。
以前、『孤独のグルメ』というドラマをよく見ていましたが井之頭五郎が注文するときの様子が好
きで、私もメニュー表を見ると冒険の地図を開けるような気がしてワクワクするのです。

メニュー表の魅せ方 -3大タイプ-

メニュー表も店頭販促POPと同じです。
どのように伝えたら店が売りたいオススメを選んでくれるのか。
複数注文してもらうにはどうしたらよいかなど、見せ方(魅せ方)を様々に工夫しています。

その見せ方を私なりに大枠で3つのタイプに分類しました。

① テキストオンリータイプ

見せ方としてもっともシンプルでわかりやすいのが特徴です。
寿司屋や町中華、老舗の定食屋に多いです。
商品名のみで写真やキャッチコピーなどのデザイン要素がないため魅力が伝わりにくいですが、
「当店はこれだけで勝負する。食べて知ってくれ。」と言うような自信を感じさせます。

あとは、旧知のリマインドに訴えかけている点が面白いです。
文字だけ読めばどんなものか『既に知っていますよね~』である。
大衆に浸透している想起があってのテキストオンリーメニューです。
何か奥ゆかしさを感じます。

アルバムタイプ

文字が少なく、一面にメニュー内容が写真で並べられた構成です。
写真は焼肉屋ですが、回転寿司や串カツなどメニューの種類が多い店でよく使われます。
文字を追わなくても理解できるので、店前にスタンド(A 型看板など)で設置するものとして効果的です。

定番での想起が出来ない海外料理のメニューなんかは写真があった方が分かり易いです。

フロータイプ

左上から右下に向かって読み進めるような流れのあるメニュー表です。
セットメニューのあるハンバーガーチェーン店に多く見られる構成です。
どこに視点を持ってくれば良いかが明確で読みやすく、店のイチオシやついで買いをしてもらいやすくなっています。
これらのタイプを軸に、どういった写真を載せたら食欲をそそるか、どういったキャッチコピーを入
れたら良いのかなど様々な要素のデザイン・構成を考えていきます。
必要な情報はもちろん載せなくてはいけませんが入れすぎると見づらくもなります。
デザイナーの腕が問われるところです。

DX で変わる注文形態

昨今は飲食業界もDX 化が進み、スマホやタブレットを使ったモバイルオーダーが増えました。
席についてメニュー表が無いなんてこともよくあります。
私自身、スマホでのオーダーが不慣れというのとメニュー表が無い寂しさを感じたりしますが、お客さんに商品の魅力を伝えて、美味しいものを食べてもらいたいという努力は媒体が変わってもしっかり感じます。

これからも日本の飲食店を応援し、冒険・探求を続けていきたいと思います。

デザイン制作したメニュー表例

少し前に実際に手掛けたメニュー表を紹介します。

とあるレストランに撮影機材を持ち込んで、レストラン側に料理を作っていただき、随時撮影を行い、デザイン制作をしました。肉料理がメインのレストランでパスタや前菜、スイーツまで結構凝りながら撮影をしました。もちろん作っていただいた料理はスタッフみんなで美味しくいただきました。

表紙

開くとメインの肉料理とサイドメニューが目にはいる

もう一段階開くと色々な肉料理とパスタのメニューになる

裏返すとディッシュ一覧になる

肉をジューシーに美味しく見せる(魅せる)

パスタの味が視覚で想像できるように

もちろんデザインの絵図を描き、構成を考えて撮影に臨みますが、
撮影は時間をかけてこだわって行いました。
結構良いメニュー表になったと思っています。

了。