コンテンツの熱量を販売促進に転換

訪日観光客が爆増中です。もちろん色んな要因がありますが、その1つに日本のアニメや漫画、映画などのコンテンツへの共感と、その体験型旅行が挙げられます。コンテンツのプロモーションへの活用でファン心理に響く体験型の販売促進が実現し、観光需要と消費拡大を同時に加速させます。

目次

日本のコンテンツが創り出す「聖地」:インバウンドを加速させる体験型旅行

筆者は大阪在中ですごく感じるのですが、最近インバウンド(訪日外国人旅行客)での来日者が爆発的に急増しているのを実感していませんか?

要因はコロナ以後の入国規制緩和、円安やビザ緩和など様々ですが、日本への集客の大きな要因の一つが日本が世界に誇るアニメや漫画、映画といった「コンテンツ」の存在があるとすごく実感しています。
これらの作品が、単なる娯楽に留まらず、人々を日本へと誘う「強力な動機」となっていると思います。

かつては海外人々が日本を訪れる旅行の主な動機は「富士山」「奈良や京都の寺院」「東京の街」といった伝統的・象徴的な風景でした。
日本の独特な文化、無宗教に近い人が多いのに様々な宗教の建造物や慣習が地方ごとに有り、祭りやイベントとして溶け込んでいる不思議な国と考える人が多いようです。

ここ数年においての訪日理由はかなり変わってきているようです。
多くの観光客は、特定のアニメや映画をきっかけに日本に興味を持ち、
「作品の世界を体験したい」という明確な目的を持って訪れます。

この現象を象徴するのが、『鬼滅の刃』です。

大正時代という日本の歴史的背景と、和のテイストを取り入れた美しい映像が世界中の人々の心を掴みました。
作品に登場するような風景や、主人公と同じ名字の神社などを訪れる「聖地巡礼」は、ファンの間で定番の旅程となっています。

地方創生にも貢献する「コンテンツツーリズム」

特定の作品がヒットすると、その舞台となった地域に観光客が集中します。
これは、これまで観光客が少なかった地方に、新しい経済効果をもたらすチャンスとなります。
例えば、新海誠監督の作品は、その精緻な背景描写で知られ、多くの「聖地巡礼」を生み出しています。
『君の名は。』では、物語の舞台となった岐阜県飛騨市や長野県諏訪湖周辺に多くのファンが訪れました。
『天気の子』では、東京の新宿御苑や代々木会館の跡地などが話題になり、ファンが地図を片手に歩き回る姿が見られました。
このように、人気コンテンツは人々を特定の場所へと引き寄せる強力な磁石となり、地域に新たな活気をもたらしているのです。

コンテンツは「文化の橋渡し」

コンテンツツーリズムの魅力は、単に「場所」を訪れるだけではありません。
作品を通じて表面的な美しさなどから興味を持ち、実際にその場で肌で感じる日本の文化や生活様式に触れ、より深く日本を理解したいという気持ちが生まれます。
スタジオジブリ作品もその代表例です。『千と千尋の神隠し』の世界観に似ているとされる道後温泉やジブリパーク(愛知県)には、海外から多くのファンが訪れます。

作品の舞台を訪れるだけでなく、作品に描かれた日本の自然や生活、そして「おもてなし」の心といった、目に見えない文化的な要素も体験したいと願っている人が多いようです。

コンテンツが創り出す「共感」と「体験」

世界中で支持されている日本の人気コンテンツは、普遍的なテーマと美しい映像で国境を越えて人々の共感を呼び起こします。
この「共感」が「実際に日本を訪れて、作品の世界を体験したい」という強い欲求へと変化し、インバウンドを加速させていると思います。
日本のコンテンツが世界で人気を博す限り、旅行客は増え続けコンテンツと観光が互いに影響し合い相乗効果を生み、更に新たな旅のスタイルを創り出していくことでしょう。

コンテンツの熱量を販売促進に転換

インバウンド需要における日本の人気コンテンツの存在は、観光誘致にとどまらず、販売促進のための有効なマーケティング資産としても活用可能です。
アニメや漫画を通じて形成された「共感」や「体験欲求」は、来訪者に特別な購買意欲を生み出します。
これを企業がプロモーション施策に組み込むことで、限定グッズの販売、舞台地域とのタイアップキャンペーン、ファン参加型イベントの実施など、多様な購買接点を創出できます。

さらに、このアプローチはトライブマーケティングの観点から極めて効果的です。
特定の作品やキャラクターを愛好するファン層は、強い結束と情報拡散力を持つ「トライブ(部族)」を形成しています。
こうしたトライブを的確にターゲティングすることで、従来型のマスマーケティングよりも高い効率で訴求が可能となります。
国・地域ごとの人気作品に合わせた細分化されたプロモーションを展開することで、ファン心理に響く体験型の販売促進が実現し、観光需要と消費拡大を同時に加速させることができるのです。

具体的な施策例

●SNSプロモーション:作品に関連したハッシュタグキャンペーンやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用により、世界中のファンが参加できる拡散型施策を展開。

●EC連動施策:限定コラボ商品のオンライン販売や、作品舞台地域の特産品と掛け合わせたギフトパッケージを海外向けに展開。

●店頭演出:聖地巡礼を意識した売場装飾やAR体験を導入し、現地でも作品世界を楽しめる購買体験を提供。

●観光連動イベント:舞台地域でのファンフェスや体験型展示を実施し、観光と購買を一体化させたプロモーションを実現。

了。