LA 店頭レポート シリーズvol.2 ep.3 ターゲット

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LA店頭レポート vol.2 ep.3 ターゲット

アメリカ社会は現在、2021年以降続くインフレーションに悩まされている。
平時のインフレ率は1〜2%を推移するとされる中、2022年の消費者物価指数(CPI)は前年比約9.2%上昇と、40年ぶりの水準を記録した。
それはコロナ禍の反動による一過性のものと思われていた。しかし、現実は2024年現在のインフレ率は約3%にまで下がったものの、それでも平時に比べ高い水準で物価は高止まりしている。

電気代やガソリン代といったエネルギー関連費用の高騰に加え、日用品の価格も上昇する一方だ。

インフレーションの中、企業は賃金を上げなければ人を雇えない。
上げた賃金が商品価格に反映され、それがさらなる価格上昇を引き起こす悪循環が起こり続けている。賃金上昇が追いつかない勢いで物価が上がっていく。

ただ生きていくためのコストが上がった。
自由に使えるお金が減った社会。

そのような社会情勢の中、小売りの現場はどうなっているのか。
物価高の中における、売り方・買い方の変化を洞察する。

観察店舗(バーバンク)

●Walmart
●Best Buy
●Target
●Whole Foods
●Ralphs
●Trader Joe’s
●ショッピングモール観察(センチュリーシティ)
Westfield Century City

今回はTargetの店頭レポート。

Target  ターゲット

“ちょっといいもの”を売るターゲット。

前回の調査とは打って変わって、賑わいを見せるターゲットの売り場。

ハロウィン需要を積極的に取り込みにいった売り場作りがなされていた。

ハロウィン関連アイテムも、子ども向けの安価なものから大人も楽しめる高品質なものまで。国民行事を、最大コスパで楽しめる工夫がなされている。

感度の高い人に、すこし気分を上げてくれるようなアイテムを売る、ターゲット本来の姿が反映された売り場が賑わいを作っているといえる。

賑わう店内。

入り口からハロウィンを強調した店内POP。

凝ったデザインながら安価(10ドル程度)の食器類が大人を魅了。

キッズ向けの安価なグッズも展開。

Expect More. Pay Less.(期待は大きく、支払いは少なく)

イメージビジュアルでも、価格が強調されるようになった。

最後に

物価高の社会でも、人々は買い物をしなくなるわけではない。
しかし、限られたお金を何に使うべきなのか。人々がお金を払うべき意味を
より強く考える社会になっているといえるだろう。

そのような情勢の中、顧客に選ばれる企業は、自分たちが顧客に提供している価値を理解し、
どうして自分たちが選ばれているのかを見つめ直し、研ぎ澄ました売り場作りをしている。

ただ、安く売ればいいのではない。
顧客は、買い物に心の充足も求めている。

インフレ社会の中だからこそ、企業は自社のブランドを見つめ直し磨くことが求められる。

そのためには、他企業と比較しオリジナリティを見出す努力ではなく、自社の提供価値を問い直し、アイデンティティを深掘りする努力、そして自社らしい売り場を作ることが不可欠だ。

日本においても物価高騰は深刻になっている。10月に2900品目余の食品の値上げをはじめとして、様々なものが値上げされ、物価高に苦しむ人が増えている。

顧客が自由にお金を使えなくなっている現在。日本においてもブランドは、顧客からお金を払う意味を問われている。改めて自社の原点的な価値は何かを見つめ、“らしい”売り場にしていくことが必要だ。米国小売企業の努力から学ぶべきことは多いだろう。


了。